2012年03月26日

いじめられている という想像

ホール業界の方々の声の中に、「ホール業界に対して行政が厳しすぎる。」とか、「ホール業界はいじめられている。」といった話題がまじっています。
一方で、弊事務所ではホールさん以外の業種も対応していますので、ホール業界以外の様子も見ています。
たとえば次の、「規制強化で“ラブホテル”急増!前年比1・7倍」
というニュースです。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20120322/dms1203221144008-n1.htm

風営法のラブホテル営業としての届出がされているホテルの総数が1.7倍になったということです。
平成22年では4号ラブホテル等として届出済みの店舗が3692件だったものが、6259件になったそうです。
これは風営法の既得権を得るために行った届出が多数あったことを意味しています。
ラブホテル営業は都道府県条例によって新規開業がほとんどの地域で禁止されていますが、平成23年1月中に届出を完了したラブホテルは既得権が認められたことになります。

これをもって、「ラブホテル業界に甘すぎる。」という批判も一部にあるようで、これはたとえば「学校のとなりのラブホテルに既得権を与えるなんて。」というような論点かと想像します。
既得権があるということは、現在の営業を継続することを認めれた、ということですが、既存の建物が使用できなくなったら「オシマイ」ということです。

改築とか増築は原則として認められませんし、建て替えもできませんから、大きな地震でも来たら、今すぐにでも「オシマイ」になります。
禁止地域以外では新規開業可能なので全部ではありませんが、6259件のうちのほとんどのラブホテルはいずれ消えてなくなってしまうと思われます。
つまり、現在のようなラブホテルという業界は、いずれ消滅するだろうということです。
規則の改正だけで国会審議を通さずに、ひとつの業界が消滅させられるのです。
現行法が許す限りの最大限の打撃が与えられたのだと、私は思います。

「業界消滅」
これはホール業界にとっても最悪の事態でしょうが、店舗数は縮小傾向にあるとは言え、業界自体が無くなるというほどの心配はされていません。
ラブホ業界に比べれば、まだマシだと言えるでしょう。

また、風俗営業として件数が圧倒的に多い社交飲食店の場合ですが、客引きや年少者使用などで逮捕や営業停止に至る件数はすごい数です。
「すごい」というのはパチンコ店に比較してのことで、営業停止処分の件数で比較すると、たぶん二ケタくらい違うだろうと思います。

また、風俗営業以外の分野でも取締りは強化されています。
かつて実質的に規制を免れていたネットカフェ業界も今では指導取締りを受けていますし、古物営業法の分野ではソフトウェアの大手買取チェーンが古物営業法違反で営業停止処分を受けています。

これらの業界ではきっと、「なんでウチの業界だけが」と感じているのではないでしょうか。
つまり、ホール業界だけが厳しくされているのではないわけで、当然ながら「いじめ」にあっているのでもありません。
世の中全体が法令違反に対して敏感になり、それにあわせて警察もこれまでにない指導や取締りを行う必要に迫られているということです。

ホール業界は、いじめられているどころか、むしろ、保護されているようにも見えます。
私のコンプライアンスセミナーでは、そういった話をよく取り上げています。
風営法の背景や趣旨、行政の状況までを的確に理解しておくことが重要だからです。

posted by 風営担当 at 17:16 | パチンコ・ゲームセンター・遊技場

2012年03月22日

普通の飲食店にも風営法は関係する という話

最近、ホール業界向けの活動ばかりだったので、ブログの内容も自然とそちらに偏っていましたが、たまには飲食店営業にも触れてみたいと思います。
こんなニュースがありました。

<ガールズバー>大阪府警が数百店の実態調査へ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120322-00000060-mai-soci

ガールズバーの取締りの話題は珍しくもありませんが、行政においては確かにここ1、2年、ガールズバーへの対策が強まっているようです。
深夜酒類提供飲食店の開業届出を提出する際には、所轄署から営業実態を詳しく質問されたり、使用権限や飲食メニューに関する資料の提出を求められたりすることが増えています。
風俗営業許可を取らないで接待営業をしようとしている事業者に対して、実態を把握したり、無許可営業にならないよう釘を刺して置きたいという事情があるのでしょう。
なお、ニュースではカウンター越しなら許可が要らないと受け取れそうな表現がありますが、接待飲食店であるかどうかの判別はカウンターなどの設備の有無で決まるわけではなく、接待行為のあるなしによります。

ニュースでは
「飲食店の許可で営業しているが、実態は風俗営業の許可が必要な形態の店も多く、府警は無許可営業の違法店舗を積極的に取り締まる方針だ。」
とありますが、無許可営業だけでなく、風営法違反の全てが取り締まりの対象となってゆくのだろうと推測します。
現状では2号社交飲食店と深夜酒類提供飲食店との間で、取り締まりや指導の方法に温度差があるところ、今後はこのような格差が徐々に無くなってゆくかもしれません。

法的には、風俗営業や深夜酒類提供飲食店だけでなく一般の飲食店でも、深夜に営業していれば従業者名簿の備え付け義務や、構造設備基準の維持義務など様々の義務が課せられているわけですが、これらの規制を受けているはずの飲食店の経営者や店長のうち、どれほどの割合の方が風営法の遵守事項や禁止事項をご存知でしょうか。

ガールズバーの定義が法的にあいまいなのは、法規制を受けにくい営業形態が模索された結果として発生した営業なのだから当然のことです。
つまり、取締りを受けにくい営業形態への偽装が今後も続くわけですから、一般の飲食店が行政の立入りや取締りを受けるリスクは徐々に高まってゆく傾向にあると思われます。

そういう意味では、夜間に営業している飲食店にとって、風営法は無視できない存在になってゆきそうです。
いや、法律理論としてはすでに規制がかかっているわけですから、無視できないはずなのです。
このあたりのことは、いずれこちら(月刊総務オンライン)のコーナーで連載する予定です。
posted by 風営担当 at 18:13 | 飲食店業界

2012年03月09日

法令遵守もキリが無いという話

外国人から見た日本のすごいところ。
よく出てくる例が、列車のダイヤが正確であるという話です。
理屈だけで考えるなら、10時0分に出発予定の列車は、10時0分0秒ちょうどに出発した場合に「正確である。」ということは言えるでしょう。
では10秒遅れたときはどうか。逆に10秒早すぎたとき。
30秒なら、もしくは1分なら。。。

一般常識的に考えてみても、朝の山手線なら1時間に24本、つまり2分30秒で次の電車が来ますから、1分の遅れでも無視できないかもしれません。
しかし、ちょっと田舎の駅ならば、1分という遅れは「どうでもよいこと」となるかもしれません。ダイヤの運行が正確なのか、不正確なのか。この違いを客観的に区別することは容易ではないようです。
しかし、ちょっと待った。ダイヤの運行が正確であった方がよいとするなら、その目的は何でしょう。。。

著作権法に関してこんなニュースがありました。

http://www.47news.jp/CN/201203/CN2012030901001225.html

著作権侵害に例外規定を盛り込むという話です。
現行の著作権法では以下の行為が著作権侵害となり、つまり違法であって犯罪でもあるという状態なのです。

(1)キャラクター商品を開発する際の社内企画書にキャラクター画像を掲載
(2)技術開発用サンプルとして音声や映像ソフトを複製
(3)ネットのサーバー上に複製データを蓄積

これらは複製権や公衆送信権などの財産権の侵害行為であり、罰則も定められています。
では、これらについて実際に著作権法をあてはめて運用しているのか。
実はそうではない実態があるし、法で規制する必要が無いと考えられるので、「著作権を侵害しない行為」として著作権法に明記する法改正をしようという話なのです。
言い換えれば、「問題にしなくてよい著作権法違反が無数にある。」ということです。

法律というものは、たかが人間が作ったものだから欠陥がありますし、社会は常に変化してゆくわけですから、全ての現実に法律をあてはめられるわけではありません。
法律が不完全であるからこそ、司法制度があり、裁判所があるわけです。

著作権法の場合、とても身近な法律ですから、皆さんがうっかり著作権法に違反しているということは実はたくさんあって、大企業や行政機関、裁判所や検察庁、警察署、私自身も含めて、細かく見てゆけばきっと何らかの著作権法違反が発生しているのだと、私は勝手に想像します。

それらの著作権法違反というものは、この社会にとっては違反行為として認識されるほどのものではなく、ほとんどが取るに足らない「ささいなこと」なのかも知れませんが、少なくとも理屈としては「違反だと言えば違反だ。」と言うことができる。そういう「ささいな法律違反」があるわけです。

それでも法令遵守はより強化され、より細かく、より徹底されてゆく傾向にあります。
それは潔癖主義の日本社会では当たり前のことなのかもしれませんが、まるで「正確なダイヤの実現」に挑戦しているようなものだと思うわけです。
つまり、完璧を求めて努力してもキリがないし、どこまで実現したら充分だということになるのか、わかりにくいという一面があります。

法令と言うものは、守られた方が良いに決まっています。
しかし、法令を守るにはコストや犠牲が避けられない場合が多々あります。
現代社会は、単に人間の本性や欲望を押さえるだけでは法令遵守が実現できないほどに、複雑高度化しているからです。

完璧を目指すのは結構なことですが、一つの問題をクリアしても、きっとまた次の問題が出てきます。法令とはそういうもので、不完全な状態が当たり前なのです。
ですから、「ほどよい程度の法令遵守」という考え方が出てきます。
この考え方の根底には、<法令遵守は社会全体の利益に寄与する限度でのみ意味がある>という発想があります。

つまり、人は法令を遵守するために生きているわけでなく、社会全体の幸福のために社会全体として法令遵守という手段を選んでいるわけですから、法令遵守の程度として、ある程度の「快適値」があるはずだということです。
この「快適値」というものは、法令の趣旨を考えて柔軟に判断することで導き出されるものです。
ところがやっかいなことに、法律を執行している公務員の世界では、「柔軟な判断」よりも、「書いてあるとおり」であることが重視される傾向があります。

そういう意味で、私が日々取り扱っている風営法は、難しい状況にあります。
著作権法の場合は民事の判例で法解釈の微調整が可能ですし、文化庁が取り締まりに躍起になっているわけでもありませんが、風営法の場合は監督官庁である警察行政が風営法の遵守に目を光らせなければなりません。
そして、この分野では裁判所が調整機能を果たすことがほとんどありませんから、司法判断によって統一されたバランスのある風営法の解釈が蓄積されるということもありません。
法解釈は常に行政判断、しかも都道府県ごとに異なる公安委員会からの、五月雨式な一方通行となるのが現実です。つまり、司法によるストッパーがない。
アクセルはあってもブレーキが無い状態。これは怖いものです。

あちらを立てればこちらが立たず。
どちらを立てても角が立つ。

風営法の分野でも、そういう困惑が徐々に増加しているように感じます。
これには、行政による風営法の適用がどんどん細かくなってゆくことに一因があります。
行政としては、法令や前例を無視できませんし、法令遵守は絶対守らねばならないという看板があります。これは決して悪いことではありません。

でも、このまま法令遵守の徹底が深化していったら将来どうなるのか。
どの程度までが適度な法令遵守なのか。
たとえば行政手続上の矛盾に日々直面している私としては、「あまり細かく法令を適用しても面倒な話になるだけで意味がない。」と思う場面がしばしばあります。

しかし行政官として「法令の適用をやりすぎても意味が無いから、この辺でストップしよう。」という判断をすることは、とても勇気が必要なことであって、それは多くの場合期待しがたいことです。
私がそのような立場だったとしても、柔軟な判断ができるという自信はありません。

あるテレビ番組で弁護士さんが著作権法について解説したことがあります。
「手書きでアンパンの絵を自動車に描いたら著作権法違反だからやめましょう」
と解説しました。なるほど、理論上はそのとおりです。

では、「5歳児が自転車にアンパンマンを描いた場合も違法ですか?あなたが親だとして、それを著作権法違反だからやめさせますか?」
と質問されたらどう答えるでしょう。その回答はテレビでは言いにくいでしょう。

「テレビの中では建前としてこう言うしかない」と考える気持ちは、私にはよくわかります。
法律が苦手な人ほど、物事を白黒はっきりさせるのが優秀な法律家だと勘違いしていますから。 
法律を語るとき、法律理論とは別次元の「さじ加減」があっても、それは公式には言いたくない。
法律オンチが多い社会においては、おおいに誤解を生むので、それは立場というものを考えればやむをえないことです。

なるほど本音は別にあっても、口を閉ざしていれば身ぎれいではいれますが、これが潔癖症で和を重んじる日本人の体質にあっているのかもしれません。ですから、「とりあえず法解釈として厳しいことを言っておこう。」となるのが法律関係者や役人の世界の人情というものです。個人の自由のために前向きに議論する風土がないせいか、「自由を規制すること」に対して遠慮する必要が感じられない社会です。厳しい法律解釈は緩やかな解釈に比べて批判されにくいのです。

しかし、現実に実務を処理する私のような立場としては、「ああそうか。」だけでは済まない毎日を送っています。とは言っても、私も気弱な人間ですから、勇気を持って議論することはありません。
各都道府県及び警察署ごとに、その「法令適用の程度」が異なるという避けがたい現実があって、それぞれの運用ごとに「正義」と「言い分」があります。受け手は相槌を打つしかありません。否定できないのですから。そういった無限にある法解釈や運用に対する配慮というものも、まさに「キリが無い」と日々感じています。

法令遵守は難しい。完璧を求めても意味がないから、ほどほどにしてほしい。
では、いったいどの程度で。。。。
まったくキリがない話です。そういう現実を踏まえて、今後のセミナーでも風営法を解説してゆこうと思っています。現実から目をそらしてリスク管理はできないからです。
来週から名古屋、大阪、東京と、めぐる予定です。
posted by 風営担当 at 18:47 | コンプライアンス総合