2014年06月25日

他社のホールを買い取りたいときの方法は?

こたえ (プレイグラフ2013年1月号「法務相談カルテ」掲載)


他社が経営しているパチンコ店の営業を譲り受ける場合には3つの方法が考えられます。

 ひとつは、他社を法人ごと手に入れる、つまり、他社の株式を取得して経営権を確保するか、又は合併して自社に吸収してしまう方法です。この方法であれば新たに風俗営業許可を取得する必要がありません。
 他社の株式を買い取った場合には、その後の役員交代や店名変更などが想定されますが、これについては公安委員会への変更の届出や許可証書換申請をするだけで足ります。

 他社を合併する場合には、必ず合併の登記を行う前に公安委員会から<合併の承認>を受けておかなければ風俗営業許可を失ってしまうという点に注意が必要です。この場合も、合併登記が終わった後で風俗営業許可証の書き換え申請を行います。

 しかし、他社が複数店舗を経営していて、そのうちの一店舗についてのみ自社へ営業を譲渡させたいという場合では、これらの方法は採用できません。
 そういった場合には、取得対象のパチンコ店の風俗営業を一度廃業して、風俗営業許可証を公安委員会へ返納してもらい、続いて自社が風俗営業許可を取得するという方法があります。

 この方法の問題点は、営業を一時的に中断することが避けがたく、新たな許可が取得できるまでの期間は原則として営業できないということと、もうひとつは、新たな許可が取得できない可能性があるということです。
 許可が取得できない理由としては「場所の要件」の問題が重要です。風俗営業の許可を受けるためには許可審査時点で「場所の要件」を満たしていなければなりません。これは主に<用途地域の制限>と<保護対象施設の有無>にかかっています。

 たとえば営業所が住居専用地域に所在していたり、営業所から一定の距離内に学校が設置されていたような場合には、風俗営業が許可されないことになります。
 既存のパチンコ店の営業許可がすでに交付されているとは言えども、その営業の許可後に用途地域が新たに設定されたり、保護対象施設が新たに開設されるといったことは珍しくありません。

最近は保育所や教育施設の新設が風俗営業許可の障害となるケースが増えており、しかもほとんどの都道府県条例では、まだ保護対象施設が存在していない状態であっても<将来保護対象施設として使用されることが決定された土地>であれば、保護対象施設がすでに存在しているものとみなされてしまうこととなっています。

 つまり、新たに許可を取得する方法には重大なリスクがあることを覚悟しなければなりません。
 こういったリスクを避けるために法人を分割する方法もあります。
 たとえばA社が3店舗を保有しており、そのうちの一店舗を第三者に譲渡させたい場合には、A社を分割して<A社+B社>の2社の状態にし、B社に1店舗又は2店舗を経営させることが可能であり、A社の分割後にA社又はB社を売却することによって店舗の経営権を移譲する方法(新設分割)がありえます。

 また、A社が保有する複数店舗のうちの一部の店舗について、既存のB社に事業を承継させる方法(吸収分割)もあります。
 この場合も分割の登記の効力が生じる前に、公安委員会から当該分割についての承認を得ておく必要がありますが、法人を分割する方法であれば、営業を継続しながら風俗営業許可を承継させることが可能です。

 法人の合併や分割は会社法が規定する各種の要件を乗り越えて行うこととなり、手続が煩雑でもあるので、あえて法人の合併や分割を避けて風俗営業許可の再取得を目指す場合が少なくありませんが、許可の再取得においては保護対象施設などが原因で許可が取得できないリスクがあることを念頭に置かなければなりません。

<場所の要件>に関するリスクは正しく理解されていないことが多いので、この点をよくご検討いただきたいと思います。


posted by 風営法担当 at 10:00 | 類似ラブホテル関係

2014年06月23日

パチンコ税がニュースに

ちょっとタイミングがずれているような気もしますが、パチンコ税のニュースが出てきました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140622-00000042-san-pol

ニュースによれば、

<パチンコ店では、利用者は一度景品を受け取り、景品問屋や景品交換所に販売して現金を受け取る方式が取られている>

という現状であるところを、

<店での換金を認め、店が一定割合を地方税として納める形式のほか、景品交換所などを公益法人に委託された業者と位置付け、一定割合の手数料を取って国または地方自治体が徴収する案が検討されている。>

という案が検討されているとのことです。

これに付随して、

<自民党の「時代に適した風営法を求める議員連盟」が2月、換金の法制化とパチンコ税導入を推奨する識者を招いて勉強会を開いた。>

とありますが、風営法と税法の改正でこれが実現できると言う話なのでしょうか。

もしそうならば、それは風営法の基本的な性格からして、かなり難しい(というか無理)と思います。

さらに、

<税調関係者は、「パチンコ税も議論になりうる。パチンコ業界も法の枠組みで認められるのは歓迎ではないか」としている。>

とありまして、パチンコ業界が「歓迎」しているかのようなご意見ですが、風営法の法的位置づけをよくご存じない政治家の方々ならばともかく、当の業界自身が、そのようなことを果たして望むものでしょうか。

風営法とは別に特別法を作って、「パチンコ営業とは別の遊技営業」を創設するならば、まだしも「ありえる」ことと思いますが、これは時間がかかりますから、法人税減税の穴埋めになるのはいつになるのやらという話です。

風営法と賭博罪の関係についてきちんと理解された人なら、風営法の改正で合法な換金を実現することが無理であることは、すぐ気がつかれるでしょう。

となれば、このニュースの内容をそのまま鵜呑みにはできないわけですが、さらに奥深い背景があるのか、それとも何かの間違いか。よくわかりません。




posted by 風営法担当 at 14:44 | パチンコ・ゲームセンター・遊技場

2014年06月14日

駐輪場に放置された自転車を使用しても大丈夫ですか?

こたえ (プレイグラフ2012年12月号「法務相談カルテ」掲載)


 駐車場の管理者としては他人の自転車を無断で廃棄するわけには行かず、当分の間はその自転車を保管しなければなりませんが、もし自転車の所有者が引き取りに来て、保管費用を支払ってくれなかったら、その保管にかかる費用は丸損ということになります。
 それではもったいないので、従業員が近所でちょっと用事があるときに、その自転車に乗ってみようかと思っても不思議ではありません。ところが、その自転車の運転中に警察官に職務質問され、調査の結果、その自転車が盗難車であることがわかったとします。
 所有者が判明して一件落着、ということで済めばよいのですが、警察官はその従業員を自転車の窃盗犯だとして疑ってしまうおそれがあります。
 その際に従業員は、自転車が駐輪場に放置されていたものだという説明をするでしょうが、今度は占有離脱物横領罪で立件すると言われたりすることがあります。

<刑法第254条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。>

 放置自転車は「占有を離れた他人の物」にあたり、これを「占有離脱物」とも言うのですが、従業員が所有する意思を持たず一時的に使用した程度で犯罪になるとは限らないものの、無用の疑いを受けるきっかけになりやすいことは間違いありません。
 自転車の窃盗事件は全国で毎年40万件前後、一日当たり1000件以上の割合で発生しており、自転車の窃盗犯の検挙が他の犯罪事件解決の糸口につながることも多いらしいので、警察官は自転車泥棒について関心を持ちやすく、疑いを晴らすのは容易ではありません。最悪の場合は犯罪者として処罰を受ける恐れもあります。

 では、このようなケースではどのように対処していればよかったのでしょうか。
 駐車場の管理者としては、放置自転車の所有者と連絡が取れないので仕方なく保管していたわけですが、引取りが期待できないとわかった時点で、遺失物法に基づいて警察署長に遺失物として届出(提出)をするという方法がありえます。
 状況によっては「遺失物ではない。」という理由ですんなりと受理されないこともあるようですが、少なくとも警察に相談をしてその事実を記録しておけば、警察から疑われた場合により少ない手間で容疑を晴らすことができるでしょう。
 管理する自転車の台数が多い場合でも、一台ごとに放置の状況やその後の管理の経緯、行政との連絡の事実等を詳細に記録しておいた方がよいです。
「自分は悪いことをしていないから大丈夫。」
 そういう考え方が通用しない場合があります。新品で購入した自転車ならばあまり心配はありませんが、他人から譲り受けたとか、捨てられていたから拾って使っているとか、そういった場合にも、泥棒扱いされる危険を承知のうえで自転車に乗りましょう。
 自転車には防犯登録制度があり、自転車の使用者は所有する自転車を登録することが義務付けられていますので、もし他人から譲り受けるなどした場合には登録の手続をしておくとよいでしょう。

 自転車を放置する側にも重大な問題があります。自転車を放置し他人に管理させてしまった場合には、当然ながら管理費用を賠償する責任があります。また、不適切な場所に放置した自転車が原因となって、他人に怪我をさせたり事故や災害を発生させた場合は損害賠償責任が生じますし、道路交通法や廃棄物処理法などの法令に違反するケースもあります。たとえば、使用しなくなった自転車を放置することは廃棄物処理法に違反します。

 <廃棄物処理法第16条  何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。>
 (刑罰:五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する)

 自転車は粗大ごみとして自治体に処分してもらうか、自転車店等で引き取ってもらうなどして適切に処分しましょう。
posted by 風営法担当 at 19:59 | 法務相談カルテ
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