2015年03月30日

他社のホールを買い取りたいときの方法は?

こたえ (プレイグラフ2013年1月号「法務相談カルテ」掲載)


 他社が経営しているパチンコ店の営業を譲り受ける場合には3つの方法が考えられます。

 ひとつは、他社を法人ごと手に入れる、つまり、他社の株式を取得して経営権を確保するか、又は合併して自社に吸収してしまう方法です。この方法であれば新たに風俗営業許可を取得する必要がありません。

 他社の株式を買い取った場合には、その後の役員交代や店名変更などが想定されますが、これについては公安委員会への変更の届出や許可証書換申請をするだけで足ります。

 他社を合併する場合には、必ず合併の登記を行う前に公安委員会から<合併の承認>を受けておかなければ風俗営業許可を失ってしまうという点に注意が必要です。この場合も、合併登記が終わった後で風俗営業許可証の書き換え申請を行います。

 しかし、他社が複数店舗を経営していて、そのうちの一店舗についてのみ自社へ営業を譲渡させたいという場合では、これらの方法は採用できません。

 そういった場合には、取得対象のパチンコ店の風俗営業を一度廃業して、風俗営業許可証を公安委員会へ返納してもらい、続いて自社が風俗営業許可を取得するという方法があります。

 この方法の問題点は、営業を一時的に中断することが避けがたく、新たな許可が取得できるまでの期間は原則として営業できないということと、もうひとつは、新たな許可が取得できない可能性があるということです。

 許可が取得できない理由としては「場所の要件」の問題が重要です。風俗営業の許可を受けるためには許可審査時点で「場所の要件」を満たしていなければなりません。これは主に<用途地域の制限>と<保護対象施設の有無>にかかっています。

 たとえば営業所が住居専用地域に所在していたり、営業所から一定の距離内に学校が設置されていたような場合には、風俗営業が許可されないことになります。

 既存のパチンコ店の営業許可がすでに交付されているとは言えども、その営業の許可後に用途地域が新たに設定されたり、保護対象施設が新たに開設されるといったことは珍しくありません。最近は保育所や教育施設の新設が風俗営業許可の障害となるケースが増えており、しかもほとんどの都道府県条例では、まだ保護対象施設が存在していない状態であっても<将来保護対象施設として使用されることが決定された土地>であれば、保護対象施設がすでに存在しているものとみなされてしまうこととなっています。

 つまり、新たに許可を取得する方法には重大なリスクがあることを覚悟しなければなりません。

 こういったリスクを避けるために法人を分割する方法もあります。

 たとえばA社が3店舗を保有しており、そのうちの一店舗を第三者に譲渡させたい場合には、A社を分割して<A社+B社>の2社の状態にし、B社に1店舗又は2店舗を経営させることが可能であり、A社の分割後にA社又はB社を売却することによって店舗の経営権を移譲する方法(新設分割)がありえます。

 また、A社が保有する複数店舗のうちの一部の店舗について、既存のB社に事業を承継させる方法(吸収分割)もあります。

 この場合も分割の登記の効力が生じる前に、公安委員会から当該分割についての承認を得ておく必要がありますが、法人を分割する方法であれば、営業を継続しながら風俗営業許可を承継させることが可能です。

 法人の合併や分割は会社法が規定する各種の要件を乗り越えて行うこととなり、手続が煩雑でもあるので、あえて法人の合併や分割を避けて風俗営業許可の再取得を目指す場合が少なくありませんが、許可の再取得においては保護対象施設などが原因で許可が取得できないリスクがあることを念頭に置かなければなりません。

<場所の要件>に関するリスクは正しく理解されていないことが多いので、この点をよくご検討いただきたいと思います。

最後に。

分割、合併、株式譲渡の方法に営業権を承継させる場合には、状況によって公正取引委員会への届け出が必要になり、届け出後に30日の分割禁止期間が設定されます。

詳細は以下をご覧ください。



posted by 風営法担当 at 16:50 | 法務相談カルテ

2015年03月13日

人生を変えるセミナーに

もともと私は一般ビジネスマン向けに知的財産の講師を長くやっていましたが、念願だった風営法の講師もさせていただけるようになりまして、今では「コンプライアンス」「法の基礎」「風営法」をミックスした研修を提供させていただけるようになりました。

願い続ければいつか夢はかなうこともある。
と、つくづく思います。

これは私にとって大変ありがたいことです。
風営法だけを語るのは、あまり意味がないのじゃないかと思ってきたからです。

私の方針は、「研修で知識を身に着けてもらう」のではなく、研修をきっかけにして、その後の生活の中で理解を深めていただくことにあります。

法律を面白いと感じていただければ、その後の興味の持ち方や考え方が変わり、その人の人生も変わります。
私は「人生を変えるセミナー」をしたいと思って、この20年を過ごしてきました。

私は公務員だったこともあり、ニートだったこともあるし、個人事業者として悪戦苦闘もしました。
その間、失敗だらけでしたが、基本的には後悔はしておりません。
今でもそうです。新しいことに挑戦し続けています。

振り返って、本当に大事だと思うことは、法律知識よりも「生き方」だと思います。
皆さんがそれぞれに納得のゆく「生き方」を選び、貫いてくださったらよいです。

私は「法律判断もその人の生き方だ。」という話をします。
だから私に「どうしたらいいか?」なんて聞かないでください、と。

どんな方から頼まれようと、私のセミナーには私の「生き方」が反映されます。
それがどのようなものであるかを、ぜひ多くの皆さんにご覧いただきたいと思います。

というわけで、下記のセミナーですが、ぜひご参加いただきたいです。
法律を解説するだけのセミナーではありません。

大方の予想を裏切る、珍妙な内容であることは請けあいます。
大阪での参加申し込みはまだまだ少ないです。どうにも認知度が薄いもので。。。

どうぞよろしくお願い致します。<(_ _)>

http://p-link.co.jp/seminar201504.html




posted by 風営法担当 at 21:27 | コンプライアンス総合

加重処分は取り消し請求可 というニュース

最高裁判決でパチンコ業界が関係するのは珍しいことです。
とは言っても、風営法の解釈に直接関わる話ではありません。

風俗営業者が営業停止処分の取消を求める訴えを起こしたところ、一審二審ともに門前払いをしたので、最高裁に上告した結果がこの判決だと思われます。

http://www.sankei.com/affairs/news/150303/afr1503030033-n1.html

すでに営業停止期間が終わっていれば、裁判をやっても意味がないので、営業停止処分の妥当性は審理しませんという判決に対して、最高裁は「営業停止期間が終わったとしても、その後類似の違反をしたときに、通常より重い行政処分を受ける可能性が高まるのだから、営業停止処分を取り消すことの意味がある、という判断です。

このように、一度行政処分を受けた後でさらに重い処分を受ける事由を処分加重事由といいます。
詳しくは警察庁のサイトでダウンロードできますが、ちょっと読みにくい内容です。

そもそも、営業停止期間が過ぎていたら、その行政処分の妥当性を裁判所で判断してもらいない、という一審二審の判決の方に驚いてしまったのですが、司法の常識ってそんな程度でしたっけ。

最高裁の判決はある意味で当たり前の判決ではないかと感じたのですが、いかがでしょう。
処分加重事由についてはまたいずれ。



posted by 風営法担当 at 10:53 | 風営法一般
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