2021年03月29日

営業中に音楽や映像を使用するには許諾が必要ですか?(法務相談カルテ年月号)

その映像や音楽などのコンテンツの内容に、第三者が保有する著作権の対象となる著作物が含まれているかどうかが重要です。著作物とは「思想や感情の創作的な表現」のことであり、第三者が制作した音楽や映像は著作物である場合が多いのですが、制作後長い期間が経過して著作権が消滅したなど例外的な場合を除けば、著作物には著作権が存在している可能性が高いと考えられます。

著作権は「権利の束」と言われ、著作物の使用を独占する複数の財産権の総称です。
たとえば、著作物の複製行為を独占する権利は複製権、著作物のインターネット上の利用を独占する権利は公衆送信権であり、このほかにもたくさんの権利があって、これらをひとまとめにして「著作権」と呼ばれています。

店舗で営業中に音楽や映像を客に聴かせたり見せたりする行為は、音楽については著作権の中の上演・演奏権を、映像について上映権を侵害する恐れがあるので、それらの権利を侵害しないよう、権利を持つ人又は法人から事前に許諾を得なければなりません。
なお、「上演」とは歌を歌うなどして演じること、「上映」とは映写幕や画面などに映写することを言います。以下に著作権法の関連条文を抜粋します。

(上演権及び演奏権)
著作権法第二十二条  著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。

(上映権)
著作権法第二十二条の二  著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。

このように著作権法では、「著作者は、その著作物を、○○する権利を専有する。」という表現をとっています。たとえば著作物をコピー(複製)する場合であれば、複製権を持っている人だけが複製できるということであり、言い換えれば、複製権を持っていない人は複製してはならないので、著作物を複製したい第三者は、その複製行為について複製権者から許諾を得ておかないと、複製権を侵害することになってしまいます。

一般的に、業務上の契約によって有線放送されている音楽は、著作権に関する権利処理が行われているので問題ありませんが、市販のCDとして入手した楽曲や、インターネットで独自にダウンロードした楽曲等を店舗で使用するような場合には、日本音楽著作権協会(通称「JASRAC」)等の機関を通じて必要に応じて権利処理を行う必要があります。

パチンコ店が営業中に楽曲を店内放送することは、有料コンサートやカラオケボックスのように、音楽を主たるサービスとして対価を得ているわけではありませんが、営利目的での使用ではあるため、原則として使用料の支払いが避けられません。

JASRACではあらかじめ決められた使用料規定に従って使用料が徴収されます。楽曲の使用についてご不明の点があれば、とりあえずJASRACに問い合わせしてみるのが無難です。

映像についても、テレビ番組やインターネットの映像を録画したものや、市販で購入したDVDの映像等を店内で上映する場合は、その映像に含まれている様々のコンテンツについて、原則として個別に許諾を得る必要があります。
映像には映像製作者が有する著作権のほか、楽曲の著作権、テレビ放送等における放送事業者の権利、映像の中に登場する画像やキャラクターに関する著作権、タレントについてはパブリシティー権など多数の権利が含まれていることが多いうえ、楽曲におけるJASRACのように、権利処理を一本化している機関が存在しないため権利処理は容易ではありません。

仮に著作権を侵害した場合には、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金が定められており、コンテンツの使用差し止めや損害賠償の請求が行われる恐れがあります。

但し、業務上の使用について必要に応じて契約がなされているのであれば問題ありません。また、保護期間の経過等によって著作権が消滅しているコンテンツについては、許諾無しで使用できる場合がありえます。
いずれにせよ、コンテンツの権利関係は複雑になっている場合が多いので、気になったときは関係先に確認してからご利用になってください。
posted by 風営法担当 at 16:16 | 法務相談カルテ

2021年03月22日

未来に問題化する確率

「居酒屋で中高生5人にビールなど30杯提供…運営会社と社員2人を書類送検」

という記事がありました。

「未成年に酒を提供したとして高知県警高知署は19日、居酒屋の運営会社(松山市)とその社員2人を風営法違反容疑で区検に書類送検した。」

と、あります。

事件化したきっかけは、

「5人は約2時間、計30杯ほどのビールなどを飲んで退店。その後、別の少年たちとトラブルになり、事情を聞いた警察官が飲酒に気づいたという。」

30杯も注文を受けて入れば、「怪しいな」と気がつきそうなもんですが、黙認していたんでしょうか。

年齢確認は面倒くさいし、店で騒動が起きなければ大丈夫。と思ったかな。

今月初め、沖縄でも似たような事件がありましたね。

似たようなことは、どこの飲食店でも、コンビニでも、ぱちんこ屋でも、起こりうることです。

え?パチンコ屋が関係するの?

って思った人。

では、深夜まで働いたあとで店長が、

「みんなご苦労さん!ビールあるよ!」

で、そのビールを飲んだスタッフの中に19歳の人が混じっていて、飲んだあと帰宅途中で職質を受けたら。

警察官が

「あれ、この人、未成年だけど酒の匂いがする。どこで入手したのかな?」

ということです。

居酒屋で未成年者が飲酒しているなんてことは、おそらく全国の普通の居酒屋で日々起きていることでしょう。

その多くは当人たち以外に気がつく人がいない。

歌舞伎町のキャバクラの時間外営業もそうですが、

「どこでも起きているけど取り締まられない違反だと思った」→「だから安心」

と考える人がほとんどです。

それが「愚か」であることは、わかっているようで、わかっていない。

少なくとも、経営者や管理責任者がそういう甘い認識では困ったものですが、実際どうでしょう。

たとえば、つい最近、総務省が東北新社の衛星放送の認定を取り消そうとしているというニュースです。

2017年1月に認定を受けた際には、ささいな瑕疵があっても、接待と同様に問題視されていなかったのですね。

おそらくは、「そんなもん」と思う常識、または思い込みたいなものがあって問題視されていなかった。

でも、こうして菅政権の政治問題に発展してメディアに叩かれてしまうと、さかのぼって問題化されるわけです。

こうしたリスクはどこの職場でも官庁でも何かしらあるわけですが、そうしたリスクを把握している経営者さんはどれほどいるのかな。

まあ、いないだろうな。現場がそれをわかっていても、その情報は伝わらない仕組みになっていますよね。

または、こういったリスクを指摘する人がいたとしても、

「君は考えすぎだよ」

という雰囲気にかき消されてしまう。

リスクを生むのは多くの場合、複数人による無関心です。そしてどうせ、無関心だった彼らは責任を取りません。

こういった現象の果てに、無関係の人が命を落としたりもしている。

まあ、そんなもんです。ある程度は仕方ありません。ただ、こういった現象を低減できたらいいですね。
posted by 風営法担当 at 13:21 | コンプライアンス総合

2021年03月18日

やっぱり心理現象じゃないの?

今月1日にアップした当ブログ。

「法律問題ではなく心理現象だったかも」
http://www.ryoko-net.co.jp/?p=91451

で触れました、観光立国調査会の
「観光業に係る法制度のあり方に関するWT(ワーキングチーム)」
ですが、その第4回目の内容がニュース記事になっていました。

記事に書いてあることが正確なのかわかりませんが、一応正しいだろうと信じるとして、風営法制度に関してなんとなく興味深い部分がありましたよ。

まずは次の部分
「旅館の風俗営業法(以下、風営法)適用については、旅館すべてに風営法が必須と解釈している自治体や地方警察が多いことが問題視されている。」

ふむ。旅館すべてに風営法が必須と解釈している地域があるんですね。
本当かな? ありえる話ではありますが、どこだろう?

そして次に。

「国は旅館の風営法に関し、「風営法に抵触しない旅館施設については、対象とみなさない。また、対象外でありながら風営法を適用している旅館についても許可証の返納を認める」としている。」

これって<当たり前>のことですね。
風営法に抵触しなければ対象にするわけがないし、対象外なのに風営許可を受けているなら返納を認める。

こんな当たり前の回答を国から受けて、その後、いったいどういう議論になったのかな?

さらに次。
「通常の接客スタイルを行う施設の風営法除外とともに、国と地元警察、自治体間の基準統一」

「通常の接客スタイル」が<接待をしていない>ことを意味しているのなら、風営法除外は当然ですね。

但し、警察の解釈が間違っていて、実際には接待していないのに風営許可を取得するよう指導されているケースがある、ということでしょうか。

しかしながら、接待をしていなくても許可を取りたい事業者は一応ありえます。

<たとえば、ウチはスナックなんですが接待はしないです。でも、一応許可は取っておきたい。>

こんな話はあります。許可を取りたければ取ったらいい。

しかし、許可を取るべきだと警察が言うから、本音では風営許可は取りたくないのに、いやいやながら取らされているんです。

ということもありえます。

それはつまり、
「あなたのお店は接待をしていないけれど風営許可を取っとけ」
と警察が指導したということなんですかね。

そんなことがありますでしょうか。推測にすぎませんが、実際にはこうじゃないでしょうか。

「ウチの旅館は風営許可が必要でしょうか?」

「接待するなら風営許可が必要です(警察)」

「接待ってなんですか?」

「従業員がお客さんと談笑したり、お酌をしたり、一緒にカラオケ歌ったり・・・(警察)」

「エッ!?それが一瞬でもあったらダメですか?」

「ま一応法律がそうなっているんで・・・(警察)」

「じゃ、許可取ります・・・」

てことではありませんかね。

こんな話があちこちにふりまかれているうちに、

<警察が全ての旅館に風営許可を取るよう指導した>

という結論が導き出されましたとさ。

さて。もしこういう「現象」だったとしたらですよ。

法制度を議論することには意味がないような気がするのです。

先日このブログで述べたことの繰り返しになりますが、

「心理的な現象」

ということになりませんかね。

もちろん、私はこの会議の実際の話は知りません。ニュース記事を見て、そんなことが思い浮かんだだけです。

なぜ思い浮かんだか。

それは私がよく関わっている業界で、偉い方々の議論をしばしば聞いていたからだと思います。

<風営法の運用実態>をよくわかっている人の意見を取り入れて議論したらよいのにな。

と思ったりします。余計なお世話ではありましょうが。
posted by 風営法担当 at 17:04 | 風営法一般
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