2019年05月20日

退職した従業員の顔写真を店内で掲示していてもよいですか?

(プレイグラフ2015年2月号「法務相談カルテ」掲載)  

A 従業員の顔や姿の写真を人の目に触れる状態にするのであれば、その被写体である従業員から了解を得ておく必要があります。
 その被写体が誰であるかを特定できるような写真が多くの人の目に触れることは、その被写体となった人のプライバシーに影響を及ぼす恐れがあるからです。
 たとえ本人から撮影の承諾を得て撮影された写真であっても、その「承諾」が「店内で掲示されること」までを含んでいるのかどうかが定かではないとすれば、本人にその写真の利用方法について説明し、事前に了解を得ておくのがよいでしょう。
 法律的には肖像権と言われる権利があるとされています。肖像権は個人のプライバシーを守る権利の一種であり、法律でその権利が明確になっているわけではありませんが、誰もが自分の肖像(顔や姿)をみだりに利用されない権利を持っていることが過去の判例において明らかになっています。
 つまり、顔や肖像を勝手に使われて自分のプライバシーが侵害されたと本人が感じれば、それは肖像権の侵害だと言えるわけです。
 肖像権を侵害することは、民法で言うところの「不法行為」にあたり、侵害された人は損害賠償や侵害行為の差し止めなどを請求できると考えられています。
 その写真利用について、たとえ業務上の必要性があったとしても、その社員がモデルとして採用されているならともかく、一般的な事務員や接客スタッフとして働いているのであれば、その従業員の同意がない限りは、会社の一方的な都合で写真を利用してよいということにはならないでしょう。
では、従業員が納得したうえで顔写真をすでに店内で掲示していた場合に、その従業員が退職した後も写真を掲示しつづけてよいのでしょうか。
 退職後も掲示し続けてよいという本人の意思が明らかならばよいのですが、自分が退職した後になってもまだその会社の従業員であるかのように扱われることは、一般的には納得しにくい場合の方が多いと思いますし、会社に対して何らかの不満を持って退職した場合であれば、なおさら否定的に受け止められるでしょう。
 人にはいろいろな価値観や事情があって、他人には推し量れない部分もあります。つまり、原則として本人の意思を確認しておくことが必要だということです。
 その写真の被写体が誰であるかが特定できないほど不鮮明である場合や、被写体が背景の一部に溶け込んでいるためプライバシーの侵害にあたる恐れがない、といった場合であれば、無断で写真を使用することはあってもよいと思いますが、そのような判断には法的に明確な基準がなく、被写体となった本人が迷惑な行為であると感じてしまえば、法的なトラブルに発展する恐れがないとは言えません。
 最近ではテレビ番組の中で、背景となった人物の肖像だけでなく、民家の表札や車両のナンバープレートにまでモザイクなどを使って不鮮明にした映像を放送していることが多くなりました。かつてはそこまでの配慮はされていませんでしたから、人々のプライバシーに関するこだわりや配慮が徐々に強くなってきているということです。
 顔や肖像だけでなく、住所、本籍、電話番号などもプライバシーに関係する個人情報にあたり、本人の意思に反して利用されないよう会社として細心の注意を払わなければなりません。
 逆に考えれば、本人がそのような肖像の利用について納得していればよいわけですから、必要に応じて了解を得ておけばよいし、それが面倒であれば写真の利用を止める、又は、その従業員の肖像を不鮮明にするなどしましょう。
 なお、写真の利用については著作権の問題も生じうることについてご注意ください。
 原則としては、その写真を撮影した人物が著作権を保有していると考えられるので、著作権を保有する人物から、その写真の利用についてあらかじめ許諾を得ておくべき場合があります。
posted by 風営法担当 at 14:58 | 法務相談カルテ