2021年09月13日

「無断駐車は10万円の罰金」と表示したいのですが(法務相談カルテ2015年12月号)

 コインパーキングなどで、よく「無断駐車」罰金○○万円などと書いてあるのをみかけます。もし、こういった駐車場などに無断駐車をしてしまった場合、無断駐車をした人は、その金額を全額支払う必要があるのでしょうか?

 民法では、第420条に損害額の予定についての定めがあり、契約に際して、契約に違反した場合の違約金の額をあらかじめ定めておくことが可能です。駐車場の看板も、これを事前に定められた違約金であると考えれば、違約金として表示した金額を、無断で駐車した人に対して請求することができるようにも思えます。

ところが、ある判例では、コインパーキングに駐車した車両がフラップ版をタイヤで踏んだ状態で駐車し、料金を払わずに出庫してしまったというケースにおいて、その駐車場の看板に表示されていた「罰金10万円」については、「本件車両は、最初から駐車料金を払う意思もないことから、契約の申し込みの意思表示が無く、駐車場を利用するという契約は成立していない。したがって、契約の成立を前提とする違約金は発生しない。」と判断されています(岐阜地方裁判所平成21年10月21日)。

駐車場を利用する人と無人の駐車場の管理者の間で相互に契約を成立させるための意思表示ができていなのなら、まだ契約が成立していない。つまり、利用者がお金を自動精算機に入れるなどの行為があってはじめて、利用者は管理者との間で駐車場を使用する契約に同意したことになる、ということなので、フラップ版を踏みつけるなど、「利用者が最初からお金を払う意思がない」場合には、そもそも駐車場管理者との間での契約が成立していないから、利用者は契約どおりの違約金を払う義務がないということになるのです。

 正直者がバカをみる判決のようにも思えてきますが、ここで注意しなければいけないのは、この判決が「10万円」という罰金(違約金)に対するものであるということです。これが正規の<駐車料金>の請求であれば、全く違う結果になったのではないかと思えます。 
つまり、その駐車場の利用料相当額については、店舗側から無断利用者に対して「使ったのだから払え」という主張はできるわけです。
 では、ホールの利用客に対して無料で利用させている駐車場の場合はどうでしょう。
看板で表示した違約金の請求が認められないならば、無断駐車に対して対抗することはできないのでしょうか。

 店舗専用駐車場は、その店舗を利用する客のために設置したのですから、客ではない人によって無断で駐車されてしまうと、店舗を利用する人が使う駐車スペースが減ってしまい、それによって店舗側は経済的な損害を受けたと考えることができるので、その損害分を請求することは可能だと思われます。
   なお、「罰金」という言葉は、法律的には犯罪に対する刑罰の一種を意味するものです。駐車場管理者が高額な罰金を徴収するという表現は、無断利用者に対していかにも私的制裁を行っているかのようなマイナスイメージをもたれてしまうことも懸念されますし、常識を外れた高額の違約金は公序良俗に反するとして、裁判所が無効と判断することもありえます。
 どの程度の請求金額が常識の範囲なのかは、その駐車場の付近の相場を元に考えることになります。しかし、店舗側が駐車を認めていない状態での無断駐車ですから、一般の相場に基づいた料金を支払わせるだけでは無断駐車を予防できないでしょう。

 なお、鉄道の旅客運送規則では不正乗車についての追徴金が正規料金の2倍以上となっている場合が多いことから、通常料金を含めて3倍の料金を請求することは常識の範囲内であろうと思います。
 なお、駐車場の無断利用は建造物侵入として犯罪にもなりえますので、警察に通報するなどの措置を警告の材料として使うこともありえると思います。
posted by 風営法担当 at 17:02 | 法務相談カルテ