しばしば悩む問題なのですが、風俗営業の営業所の用途地域が近隣商業地域であった場合に風俗営業1号(社交飲食店)の許可が出るのでしょうか?
答えは「許可がでます」
風営法の許可基準では住居系の用途地域(たとえば住居地域など)でなければOKで、さらに学校・病院など保護対象施設が規定距離内に存在しなければよいということになっています。
なってはいますが・・・・。
建築基準法の用途制限を見ると、近隣商業地域で制限された用途の中に「キャバレー、料理店、ナイトクラブ、ダンスホール等」が含まれています。
キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホール、いずれも風俗営業1号,2号、3号の種別にあたる風俗営業なのでわかりやすいですが、「料理店」だけはひっかかります。
料理店と言ったら一般的に何を思い浮かべるでしょうか?
料理を出す店のことだから、レストラン、寿司屋さん、そしてファーストフードも料理店?
と考えてしまっても非常識ではないでしょう。
しかし建築基準法が想定している「料理店」の範囲は全くの別の意味のようです。
昭和26年当時と思われる行政の見解によると、<カフェーは料理店に含まれるが、レストランは飲食店として取り扱う。「飲食店」と「料理店」の区分については、風俗営業取締法に基く名称は、各都道府県により区々であり全国的に名称を統一できないから、名称が和洋の如何に関わらず、飲食が主か遊興が主かによって区分すること。従って通常「かっぽう料理店」「レストラン」は飲食店に含まれるが、遊興を主用途としたカフェーは料理店に含まれる。>という考え方だったそうです。
つまり最初から風営法を意識した規制になっています。
確かに風営法の2号営業の定義として「待合、料理店、カフェーその他設備を設けて客に遊興又は飲食をさせる営業」(2条1項2号)とあります。
現在では「社交飲食店」という言葉が使われていますが、元々2号営業は「待合」「料理店」「カフェー」と呼ばれていたのですね。
では料理店と飲食店とはとこが違うのかと言うと、女中さんや女将さんがいて店で接待などの遊興をする店は料理店で、単純な飲食のみを提供する店が飲食店だという意味のようです。あくまでも当時の建築行政の考え方です。
女中さんという言葉は一昔前はホステスさんのことを意味していたのですね。
ちなみに「カフェー」も2号営業にあたるようですが、「カフェー」と「カフェ」では違う意味として扱われています。
つまりカフェーはホステスさんが接待する店のことで、民法の勉強の際によく出てくる「カフェー丸玉女給事件」というのも、喫茶店ではなくて、今で言うところのキャバクラのような店での出来事だったのですね。
というわけで、建築基準法用途制限の「料理店」は今で言う2号営業社交飲食店を意味するので、建築基準法としては近隣商業地域での2号営業は違法営業だということになります。
ところが冒頭述べたとおり、警察が風俗営業許可申請を手続として取り扱うのは都道府県公安委員会の委任事務、つまり行政手続として取り扱っていますから、犯罪捜査としてどうこう言うのではなく、あくまで風営法関係法令に従って処理します。よって行政としては建築基準法違反でも許可してしまうということになってしまいます。
奈良市のラブパチ条例で話題になったホールも、条例違反の不起訴決定に先駆けて風俗営業許可を取得していたと思います。
そうなると、近隣商業地域で1号営業をするのかどうか悩むところです。
もちろんこれから営業所を新設するのであれば、やめてください、という結論になりましょうが、長い間無許可でやってきた店が警察の立ち入りを受けて許可を申請しようとするケースもよくあります。こういった場合に廃業するわけにもいかず、かといって許可申請をして大丈夫だろうかということが気になります。
というのも、一部の警察署で建築基準法違反を理由に許可取下げを求めたり、申請を受理しないといった話をまれに聞くからです。
警察は手続を取り扱っている場合は行政としての顔を持っていますが、犯罪捜査の場合は司法としての顔を持ちます。
つまり風俗営業許可を出しておきながら、営業開始と同時に建築基準法違反で立件することも可能なわけで、これをどのように考えるかが難しいところです。
ここ数年は警察が建築指導課や消防と共同で実査にのぞむ場合も現にありますから、許可さえ取れるならそれでよい、と割り切るには勇気が要ります。
非常に悩むところです。
2008年09月25日
近隣商業地域で風俗営業1号の許可をとれるのか 料理店と飲食店の違いとは
posted by 風営法担当 at 11:09
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| 飲食店業界
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