2013年03月18日

実は私、ゲスでした

(法務コンシェルジュメールマガジン2012年10月24日掲載)


職場において、自分よりも上位の役職にある人のことを「上司」と言います。
上司の反対語はなんでしょう。
字から想像すると「下司」となるでしょう。「上」と「下」を入替えただけですね。

さて、「下司」はどのように発音するか。
「下司」を姓にしている人は意外と多いのですが、「かし」さんとか「しもし」さんとかいう読み方があるようです。
この姓を持つ方々のご先祖は中世の地方豪族だったかもしれません。
「上司」の反対語としての「下司」は、古来から「ゲス」と読まれてきました。

「ゲス」という言葉は、現代ではとてもひどい悪口として使われています。
「このゲス!」なんて言われたらケンカになりますね。
しかし、「ゲス」の由来は中世の下級役人を意味する「下司」だという話があります。

中世の日本において上級の役人は貴族階級であり、もっぱら京の都に住んでおりましたが、地方の行政事務は地方の有力者から選ばれた役人に管理させていました。
それら下級役人の職務のことを「下司(げす)」と言いました。
もともと「上司」「中司」「下司」は律令制における役職を示す用語だったわけです。

下級役人とは言え地方の名士ですから、当時の庶民からみれば「偉い人」のはずですが、中央にいる貴族階級からすれば「身分が低い人」だと言われます。貴族が日頃接することのできる地方民は「下司」に限られたでしょう。
なので、身分の低い人をさげすむ言葉として「たかが下司(げす)の分際で・・・」という言われ方もあったでしょう。

これが現代に至っても「下司の勘繰り」などと言って、「品性が卑しい人ならではの邪推」という意味で使われたりします。
最近、政治家が週刊誌とケンカすることが多いですが、「どうせ選挙のためだろう。」などとマスコミから言われるのは、政治家にしてみれば「下司の勘繰り」となるかもしれず。

しかし、下司は本来悪い意味の言葉ではありません。
現代でも「上司」という言葉は法律用語として残っているし、一般的にも使われていますが、「下司」は見あたりません。
部下が失敗をしたときに「このたび私のゲスがとんだご迷惑を・・・」とは言いません。
そういえば私もかつては下級の公務員でした。つまり、元ゲスということです。
だからと言って、役所の人に向かって「このゲスめ!」なんて言わないでくださいね。


posted by 風営法担当 at 00:00 | 歴史チャンネル