2013年03月28日

古代のNGワード!? 幻の毛の国とは

(法務コンシェルジュメールマガジン2012年11月14日号掲載)

通勤の途中で見かける小さいスナックがありまして、店名が「下野」とあります。
栃木県出身の人が経営しているのかな・・・と想像してしまうのは、「下野」は栃木県の古い国名だからです。

律令体制における栃木県は「下野」と表記し、「しもつけ」と読まれましたが、この国名の由来は「下の毛」にあります。しかし、別にひわいな話ではありません。

まだ古墳が作られていた時代のことですが、現在の群馬県と栃木県あたりには「毛」と呼ばれる国がありました。
このあたりには大型の古墳群がいくつかあって、大和朝廷と肩を並べる強大な王権があったと想像されます。

「毛」なんて国は歴史のどこにも出てこない?
いやいや。記紀の中では「上毛野田道(かみつけのたぢ)」や「上毛野形名(かみつけのかたな)」などの武将が蝦夷討伐で活躍していますし、文武天皇の時代に律令編纂に関わった下毛野古麻呂の記録もあります。
これら「毛氏(けのうじ)」は毛の国の王族の地を引く人たちで、大和朝廷における有力貴族でもありました。
「毛」という字からは、体毛が濃かったかもしれない東国の蝦夷の地を引いた部族がイメージされますが、実際のところよくわかりません。

鬼怒川という川がありますが、かつては北関東の水を集めて霞ヶ浦方面にそそぐ大河でした。
もともとは「毛の川(ケノカワ)」と呼ばれていたのが「キヌガワ」になまったものとも言われています。

古来より、中央に近い方を「上(かみ)」、遠い方を「下(しも)」と言います。
毛の国のうち、畿内に近い群馬県側を「上つ毛の国(かみつけのくに)、遠い栃木県側を「下つ毛の国(しもつけのくに)」と言いました。

ですので、もともとの国名表記は「上毛国」「下毛国」でした。
しかし、古代においてもこの言葉の表記は微妙だったようです。
現代人でも頭髪のことを「髪(かみのけ)」と言いますが、これは本来「上の毛」であります。
では「下の毛」が何を意味するか、おわかりですよね。

要するに「下毛国」という表記は当時でもNGワードだったということで、和銅6年(713年)に発せられた勅令「諸国郡郷名著好字令」によって「毛」の字は野原を意味する「野」に変えられてしまい、「上野国」「下野国」となりましたが、「かみつけ」「しもつけ」という読み方だけが残りました。

NGワードゆえに歴史から消された「毛の国」ではありますが、両毛線という鉄道がありますし、上越新幹線では上毛高原駅があります。
今でも「毛の国」の痕跡は残っているのです。

posted by 風営法担当 at 00:00 | 歴史チャンネル