2013年06月10日

一般飲食店に対する客引きの規制

風営法では風俗営業者のほか、店舗型性風俗特殊営業や深夜の飲食店営業などによる客引き行為を禁止しています。

一般的に風営法と縁が無いと思われている普通の飲食店であっても、深夜0時以降に客引きを行えば風営法違反となります。

言い換えれば、深夜0時より前の時間帯であれば、居酒屋やカラオケ店などが客引きをしたとしても風営法違反には問われないことになります。

また迷惑防止条例においても不当な客引きが禁止されていますが、こちらも売春などの性的サービスに類似する営業による客引きを規制しているものの、それ以外の客紀を規制するには物足りない内容です。

さて、新宿区では「(仮称)新宿区公共の場所における客引き行為等の防止に関する条例の骨子(案)」についてパブリックコメントが募集されていましたが、その後区議会に条例案として提出される運びのようです。

これまで法令の及ばなかった一般飲食店が規制の対象となるかもしれません。
この違反行為に対して罰則はありませんが、行政庁が中止を指導できる内容になるようです。
罰則がなくとも違法は違法です。
大手チェーンにとっては「罰則がないから大丈夫」というわけにも行きません。

たしかに巷の客引きには、ときに目に余るものがあります。
商売熱心なのは結構ですが、そろそろこういった行為も法の規制が必要になるのでしょうか。


http://www.city.shinjuku.lg.jp/anzen/kikikanri01_001042_01.html


posted by 風営法担当 at 14:56 | 飲食店業界

2012年11月24日

ダンス規制の解釈について思う

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?ANKEN_TYPE=3&CLASSNAME=Pcm1090&KID=120120009&OBJCD=&GROUP=

ダンス教授団体の指定等に関する風営法施行令の改正について、パブリックコメントの募集結果が公表されました。
内容は上記リンク先をご覧ください。

最近はパチンコ屋営業に関連することで頭がいっぱいでして、飲食業や性風俗関係は二の次になっておりますが、ダンス規制のあり方も今後の風営法の行方に関連すると思って注目しております。
今回公表された内容を読んで興味深かった点に触れます。

ダンス規制の必要性について行政の解釈。
以下、抜粋。

「・・・したがって、社交ダンスに代表されるような男女がペアとなって踊ることが通常の形態とされているダンスを客にさせる営業は、その性質上、男女間の享楽的雰囲気が過度にわたる可能性があり、4号営業として規制対象となりますが、一方、ヒップホップダンスや盆踊りなど、男女がペアとなって踊ることが通常の形態とされていないダンスを客にさせる営業は、それだけでは、男女間の享楽的雰囲気が過度にわたる可能性があるとは言い難く、現実に風俗上の問題等が生じている実態も認められないことから、原則として4号営業として規制対象とする扱いをしていません(ただし、このようなダンスを客にさせる営業であっても、例えば、ダンスをさせるための営業所の部分の床面積がダンスの参加者数に比して著しく狭く、密集してダンスをさせるものなど、男女間の享楽的雰囲気が過度にわたる可能性があるものについては、4号営業として規制対象となりえます。)。」 以上

以前にブログで書いたかもしれませんが、本来風営法の規制対象となるダンスとは、「男女がペアとなって踊る」という要素があるものに限定されるべきだと思っていましたので、この点よくわかります。

そして、仕方がないのですが、この要素のあるなしでダンス営業を線引きすることは、実際にはなかなか難しい側面を含んでいます。
無許可4号営業の取り締まりに際して、「男女ペアでは踊らせていなかった。」という言い訳が出るでしょうが、「それでも男女間の享楽的雰囲気が過度となる可能性があった」という理由で無許可営業が成立することになります。

各人が好き勝手に単独で踊っている場合でもすでに取締りを受けていると思います。
「男女がペアとなって踊ることが通常の形態とされているダンス」は「男女間の享楽的雰囲気」が「過度」となる「可能性」があるから規制対象なのであって、社交ダンスはその一種に過ぎないという論理であるにしても、そのような規制対象、つまり「過度な享楽的雰囲気の可能性」があるダンスと他のダンスとで一線を画することは容易ではありません。

実際の取締りの現場では、社交ダンス自体は取り締まるべき対象とは考えられていないと思います。
一般的なクラブハウスのような、各人が自由に踊る形態のお店が取締りの対象になっていることが多いと思われますが、「踊りの形態」で識別しようとすると「男女ぺア」の論理では通用しにくいことがあるでしょうから、ダンスをさせている店の「雰囲気」で識別するという話になってしまうのでしょう。
風営法上の規制の趣旨も、本来はそこにあるのだと思います。

ですので、今回の内容には「雰囲気」という概念が持ち込まれています。
「男女間の享楽的雰囲気が過度にわたる可能性」の有無で線引きするとなっているのは、このような事情からでしょう。
しかしこの言葉、風営法ではよく用いられる手法ですが、「享楽的」「雰囲気」「過度」「可能性」といった線引き困難なあいまいな言葉を羅列しているわけで、これでは「行政の判断次第」という状況は以前として残るということになります。

ダンスが学校教育で必修になるような事態だからこそ、ダンスについて行政の恣意的判断が持ち込まれる可能性が少なくて済むような仕組みが期待されていたのではないかと思うのですが、どうもそういう方向性ではないようです。
「飲食店+ダンス」とか「深夜+ダンス」といった要素で仕分けなら、ダンスについて議論しないで済むかもと思っていましたけれど。

ともかく、今回の内容ではダンスの内容よりも、「雰囲気」で判断するという考え方が濃厚に出てきました。
あえて単純化して言えば、「どのようなダンスや踊りであろうとも、享楽的な要素があれば規制対象となりうる」ということであろうと思います。「男女間の」という言葉には「性的な」という意味があるのでしょうが、「単純な享楽」と「男女間の享楽」にどれほどの差があるでしょう。

ロックミュージシャンのコンサートでは観客が踊っていますが、あれは「過度には享楽的ではない」となるのでしょうか。でも楽曲の内容によっては著しく享楽的になりえます。
時代劇などでは、男が芸者と一緒に踊って遊ぶようなシーンがありますが、あれは享楽的だということで4号営業だと。
でも日本舞踊の教授は4号にはあたらない、なぜなら享楽的要素がないから。
「日本古来の踊り」ではありますが、雰囲気に対する「イメージ」によって違法か合法かが異なるわけです。
しかし、そのイメージはいったい誰のイメージなのか。

こういったことは風営法の宿命みたいなもので、ある程度さけられないことではありますが、今回の政令改正について、自分が教えるダンスを享楽的ではないと思っているダンス教授者の皆さんはどうお考えになるのでしょう。考えようによっては、ダンスは全て享楽的なものではあります。だから「過度」という言葉をつけたのでしょうが、何を持って「過度」とするか。

これまで「一部の人たち」だけが向き合っていた風営法又は「行政判断」というものが、「一般の人たち」にまで影響を及ぼしつつあります。
この傾向は今後も進んでゆくのでしょうが、ダンス規制のあり方はこの方向性で済むのかどうか悩ましいところです。

とりあえず思いつくところを書きましたが、考えが変わったらこの文章を修正します。
posted by 風営法担当 at 19:11 | 飲食店業界

2012年10月28日

風営法規則改正案とダンス教室の行方

以前、風俗営業におけるダンス規制の在り方について述べたことがありました。
ダンスが中学校で必修化されましたが、風営法との兼ね合いで様々な矛盾があるのではないかということです。

風俗営業の4号は「ダンスホールその他設備を設けて客にダンスをさせる営業」という定義であり、ダンスを教える教室もこれに該当します。

しかし、「客にダンスを教授する場合にのみ客にダンスをさせる営業」については、そのダンス教授者が一定の条件にあてはまる者である場合には、そのダンス教室は風俗営業の「例外」、つまり<風俗営業ではない>ということになっています。

この例外規定にあてはまるための一定の条件とは、<指定講習機関から推薦を受けた者がダンスを教授している>ということです。
その推薦は、<国家公安委員会が指定した試験に合格した者>を記載した名簿を提出する方法で行われます。

現在、国家公安委員会から指定を受けた講習の課程を修了し、かつ、指定を受けた試験に合格した者が、特定講習団体(現在「全日本ダンス協会連合会」と「日本ボールルームダンス連盟」の2団体のみ)から推薦を受けて初めて、風俗営業に該当しないダンス教室を経営することが可能となっています。

言い換えれば、現行の風営法の中では、<指定講習機関が実施する試験に合格した者(又はこれと同等とみなされた者)がダンスを教授しているダンス教室>だけが例外規定にあてはまるのであって、それ以外のダンス教室、それは社交ダンスに限らず、リトミックだろうとバレエだろうと、サルサだろうと、日本舞踊だろうと、ダンス、踊りとされるあらゆる種類の踊りを客に行わせる営業が全て風俗営業だという解釈になろうかと思います。

現在では社交ダンスに限らず、クラブハウスなど社交ダンス以外のダンス関連営業についても取締りが行われていますが、風営法によるダンス規制は社交ダンスの規制を想定して始まったわけです。
そのため現行の風営法において、前述の例外の適用を受けられるのは、様々なダンスのうち社交ダンスに限定されています。

客にダンスをさせる営業は全て風俗4号営業に該当するとしながら、様々な種類のダンスの中から社交ダンスの教室だけ(条件付とは言え)が例外とされているのであれば、
「風俗営業規制におけるダンスとは、すなわち社交ダンスのことである。」
ということを裏付けているようなものでもあり、もし社交ダンス以外のダンスについても同様の規制を課すのであれば、社交ダンス以外のダンスに対して不公平ということにもなります。

そこで今回の規則改正案においては、現在指定を受けている2団体の講習以外についても誰でも指定を受けられるようにすることが主眼となっています。
裏をかえせば、指定された講習や試験を修了した人と同等とみなされない人が教えているダンス教室は、風俗営業許可がない限り全て違法ということでもあります。

これは今回の規則改正以前からすでにそうだったわけですが、私個人の見解としては、バレエだの日本舞踊だの、ヒップホップだのといったものまでが規制対象だったと解釈することには抵抗感があります。
当初の趣旨としては社交ダンスを規制の対象として想定していたわけですから、風営法の規制を受けるダンスの種類について「男女が体を密着して踊る」「深夜に踊る」といった限定をするのではないかと想像していました。ありていに言えば、クラブハウスに的をしぼった規制のかけ方になるとの予測でした。

しかし今回の改正案では、ダンス教室を含めた全てのダンス営業が原則として風営法の規制を受けているという解釈を前提としているのであって、規則改正後には、この解釈を元に社交ダンス以外のダンス教室に対しても無許可営業の取締りが行われることが予想されます。
取締りが行われないのであれば、わざわざ指定を受けた機関が馬鹿を見ることになり、制度の信頼を損なうこととなるからです。

極端ではありますが、幼児が通うバレエ教室も規制対象となりうるのであれば、これはかなりの混乱が予想されます。
すでにクラブ事業者等による風営法改正運動が活発になっていますが、規制緩和でなく規制強化の方向での規則改正ですから、今後さらに議論を呼びそうな予感がします。

経済活性化のために規制を緩和するという路線が盛り返しそうな雰囲気だったところでのこのような改正案です。
今後注目したいと思います。

改正に関するパブリックコメントの募集はすでに打ち切られていますが、改正案についてはこちからご覧になれます。


http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=120120009&OBJCD=&GROUP=

posted by 風営法担当 at 19:43 | 飲食店業界

2012年03月22日

普通の飲食店にも風営法は関係する という話

最近、ホール業界向けの活動ばかりだったので、ブログの内容も自然とそちらに偏っていましたが、たまには飲食店営業にも触れてみたいと思います。
こんなニュースがありました。

<ガールズバー>大阪府警が数百店の実態調査へ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120322-00000060-mai-soci

ガールズバーの取締りの話題は珍しくもありませんが、行政においては確かにここ1、2年、ガールズバーへの対策が強まっているようです。
深夜酒類提供飲食店の開業届出を提出する際には、所轄署から営業実態を詳しく質問されたり、使用権限や飲食メニューに関する資料の提出を求められたりすることが増えています。
風俗営業許可を取らないで接待営業をしようとしている事業者に対して、実態を把握したり、無許可営業にならないよう釘を刺して置きたいという事情があるのでしょう。
なお、ニュースではカウンター越しなら許可が要らないと受け取れそうな表現がありますが、接待飲食店であるかどうかの判別はカウンターなどの設備の有無で決まるわけではなく、接待行為のあるなしによります。

ニュースでは
「飲食店の許可で営業しているが、実態は風俗営業の許可が必要な形態の店も多く、府警は無許可営業の違法店舗を積極的に取り締まる方針だ。」
とありますが、無許可営業だけでなく、風営法違反の全てが取り締まりの対象となってゆくのだろうと推測します。
現状では2号社交飲食店と深夜酒類提供飲食店との間で、取り締まりや指導の方法に温度差があるところ、今後はこのような格差が徐々に無くなってゆくかもしれません。

法的には、風俗営業や深夜酒類提供飲食店だけでなく一般の飲食店でも、深夜に営業していれば従業者名簿の備え付け義務や、構造設備基準の維持義務など様々の義務が課せられているわけですが、これらの規制を受けているはずの飲食店の経営者や店長のうち、どれほどの割合の方が風営法の遵守事項や禁止事項をご存知でしょうか。

ガールズバーの定義が法的にあいまいなのは、法規制を受けにくい営業形態が模索された結果として発生した営業なのだから当然のことです。
つまり、取締りを受けにくい営業形態への偽装が今後も続くわけですから、一般の飲食店が行政の立入りや取締りを受けるリスクは徐々に高まってゆく傾向にあると思われます。

そういう意味では、夜間に営業している飲食店にとって、風営法は無視できない存在になってゆきそうです。
いや、法律理論としてはすでに規制がかかっているわけですから、無視できないはずなのです。
このあたりのことは、いずれこちら(月刊総務オンライン)のコーナーで連載する予定です。
posted by 風営法担当 at 18:13 | 飲食店業界
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