2020年08月24日

割り印や捨て印とはなんですか?

(プレイグラフ2015年4月号「法務相談カルテ」掲載)

契約書は、署名または記名捺印をすることによって完結します。また、押されている位置によっても意味合いが違ってきますので、正しく理解することが求められます。
 文書を作成したときには、氏名の横やとじ目の上、余白などに印章(印鑑)を押すことがありますが、この押された印章の跡のことを、「印影」といいます。印影は、押されている場所によって意味が異なります。
1.契印(けいいん)
 「一通の文書が2枚以上になった場合に、それらが全体として一つの文書であり、かつ、その順序でとじられていることを明らかにするために、両ページにまたがって押す印影のこと」をいいます。注意する点としては、
・ 一つの契印が両ページに半分ずつまたがるように押す 
・ 必ず一枚ごとに押す
・ 文書に自署または記名した際に押した印章と同一の印章を押す
・ 二人以上が自署または記名している場合には、全員が契印を押す
ただし、数ページの文書を帯でのり付けしている袋とじの場合は、裏表紙と帯にまたがって、一か所に契印すればよいとされています。
2.訂正印
「文書の字句を誤字脱字等の理由で訂正する場合に、その 訂正箇所または欄外の訂正内容を明記した部分に押す印影のこと」です。注意する点としては、
・ 訂正部分を二重線で消し、横書きならその上、縦書きならその右横に訂正後の字句を記入する
・ 文書に自署または記名した際に押した印章と同一の印象を押す
・ 二人以上が自署または記名している場合には、全員が訂正印を押す
などがあります。
3.割印
「二通以上の独立した文書がある場合に、それらの文書の同一性や関連性を示すために、それらの文書にまたがって押す印影のこと」をいいます。割印は、それぞれの文書の関連性を示すものなので、文書に自署または記名した際に押した印章と同一の印章でなくてもよいとされています。
4.捨印
「後日、文書の内容を訂正する必要が生じた場合に備えて、あらかじめ欄外に押す印影のこと」をいいます。訂正印と同じ意味を持っています。注意する点としては、
・ ある程度の範囲内で文書の訂正が自由にできるため、むやみには押さないようにする
・ 文書に自署または記名した際に押した印章と同一の印章を押す
・ 二人以上が自署または記名している場合には、全員が捨印を押す
などがあります。
5.消印
「収入印紙の再使用を防ぐために、印紙と下の台紙にまたがって押す印影のこと」をいいます。消印は、文書に自署または記名した全員が押す必要はありません。また、文書に自署または記名した際に押した印章と同一の印章でなくてもよく、さらに印章ではなく、署名でもよいとされています。注意する点としては、
・印紙の彩紋(もよう)にかかっていること
・印紙と文書の双方にかかっていること
・印鑑による場合は、朱肉、インクなどにより、鮮明に押してあること
・筆記具による場合は、ボールペンなど消えないものによること(鉛筆などは不可)
6.止め印とは、
「文書の下に余白が生じた場合に、その文書の終了を示すために文書の末尾に押す印影のこと」をいいます。注意する点としては、
「文書に自署または記名した際に押した印章と同一の印章を押す」
などがあります。印章ではなく、「以下余白」などと記入しても同じ意味を持ちます。
最後に、母印や書き判のことについて、少しご説明します。印鑑を持ち合わせていないときに、代わりに指先で「母印」を押すことがあります。親指や人差し指で押すことが多いようですが、母印は一般的に公文書では使いません。また、名前を書いてその周りをさっと丸で囲んで押印の代わりにしたりすることがよくあります。これを「書き判」といいますが、これも公文書では使いません。

鰍フぞみ総研 平井知子
posted by 風営法担当 at 09:52 | 法務相談カルテ

2019年07月22日

公安委員会に提出する使用承諾書とは何ですか?

(プレイグラフ2015年3月号「法務相談カルテ」掲載)  

 風俗営業許可申請の手続の際に添付すべき書面の一つに、「営業所の使用について権原を有することを疎明する書類(使用権限を疎明する書類)」というものがあります。「疎明する書類」とは、その内容が一応確からしいと推測できる程度の書類を意味します。
 つまり、風俗営業の許可を受けようとする者は、営業所の敷地や建物を風俗営業のために使用できる正当な権利があることを疎明する書類を、公安委員会に提出しなければならないということです。

 許可を受けようとする事業者がその営業所の建物を所有しているのであれば、その事業者がその建物の所有者であることを証明する登記事項証明書を提出すればよいでしょう。もし建物の敷地だけでなく駐車場や駐輪場など建物周辺の敷地についても風俗営業のために使用される予定であれば、それらの敷地についても使用権限を疎明する書類を求められることがありえます。

 許可を受けようとする事業者が営業所を他人から借りて営業する場合には、その営業所の所有者が風俗営業としての使用について承諾していることを示す書面が必要です。事業のために建物や土地を賃貸する際には、通常賃貸借契約書を作成していることが多いでしょうから、その写しを提出することができます。但し、疎明されるべき使用権限は風俗営業の種別のどの営業であるかが特定できる内容でなくてはなりません。
 
 たとえば、パチンコ店の営業許可であれば、パチンコ店営業のために使用することが承諾されていることを確認できる賃貸借契約書であることが望ましく、賃貸借契約書における使用用途が明記されていない、又は、用途がパチンコ店営業であるかどうかが明確でない賃貸借契約書は、「使用権限を疎明する書類」として好ましくないとされる恐れがあります。
 かといって、許可申請のために賃貸借契約書を作り直すわけにも行かないので、その代わりとして使用承諾書という書面を作成して提出することがよくあります。

 使用承諾書には、承諾を受ける事業者の名称、承諾をする所有者の住所氏名、使用される営業所の所在地とその構造、使用期間など一定の事項が記載され、承諾者が署名又は捺印しているものでおおむね通用しているようです。使用承諾書は法令で定められた書式ではありませんが、全国で類似した書式が使用されています。
さらには、その使用を承諾した者がその営業所の所有者であることを示す登記事項証明書も必要となります。
使用権限の疎明には、所有者の特定をめぐって、ときに面倒な手配が必要となる場合があります。

 たとえば、営業所を所有者から直接借りるのではなく、所有者から管理や使用を認められた第三者から風俗営業者が借り受ける場合があります。この場合は、その第三者が風俗営業のために転貸する権限があることを疎明できる書類(賃貸借契約書や管理委託契約書の写し等)を用意し、なおかつその第三者から風俗営業のための使用を承諾されたことを疎明できる賃貸借契約書や使用承諾書等が必要となります。

 所有者が複数存在している場合には、その所有者全員又はその過半数以上の持分を有する者から使用を承諾されたことを示す書面の提出を求められることがありますし、所有者が住所を移転していて、その移転の事実がまだ登記されていない場合には、その住所移転の事実を示す証明書の提出を求められることもあります。
所有者が死亡していてまだ相続登記が完了していない場合には、相続関係を示す戸籍謄本など、誰が現在の所有者であるかを示す資料が必要となることがありえます。

 使用権限を疎明する書類は、営業所を拡張した場合にも、その拡張部分の使用の権限についても提出を求められることがあるようです。これらの書類を用意するために長い日数がかかってしまうことがありえますから、使用権限の疎明はなるべく早い段階で準備にとりかかる、必要に応じて行政庁に相談することをおすすめします。
以上
posted by 風営法担当 at 14:32 | 法務相談カルテ

2019年05月20日

退職した従業員の顔写真を店内で掲示していてもよいですか?

(プレイグラフ2015年2月号「法務相談カルテ」掲載)  

A 従業員の顔や姿の写真を人の目に触れる状態にするのであれば、その被写体である従業員から了解を得ておく必要があります。
 その被写体が誰であるかを特定できるような写真が多くの人の目に触れることは、その被写体となった人のプライバシーに影響を及ぼす恐れがあるからです。
 たとえ本人から撮影の承諾を得て撮影された写真であっても、その「承諾」が「店内で掲示されること」までを含んでいるのかどうかが定かではないとすれば、本人にその写真の利用方法について説明し、事前に了解を得ておくのがよいでしょう。
 法律的には肖像権と言われる権利があるとされています。肖像権は個人のプライバシーを守る権利の一種であり、法律でその権利が明確になっているわけではありませんが、誰もが自分の肖像(顔や姿)をみだりに利用されない権利を持っていることが過去の判例において明らかになっています。
 つまり、顔や肖像を勝手に使われて自分のプライバシーが侵害されたと本人が感じれば、それは肖像権の侵害だと言えるわけです。
 肖像権を侵害することは、民法で言うところの「不法行為」にあたり、侵害された人は損害賠償や侵害行為の差し止めなどを請求できると考えられています。
 その写真利用について、たとえ業務上の必要性があったとしても、その社員がモデルとして採用されているならともかく、一般的な事務員や接客スタッフとして働いているのであれば、その従業員の同意がない限りは、会社の一方的な都合で写真を利用してよいということにはならないでしょう。
では、従業員が納得したうえで顔写真をすでに店内で掲示していた場合に、その従業員が退職した後も写真を掲示しつづけてよいのでしょうか。
 退職後も掲示し続けてよいという本人の意思が明らかならばよいのですが、自分が退職した後になってもまだその会社の従業員であるかのように扱われることは、一般的には納得しにくい場合の方が多いと思いますし、会社に対して何らかの不満を持って退職した場合であれば、なおさら否定的に受け止められるでしょう。
 人にはいろいろな価値観や事情があって、他人には推し量れない部分もあります。つまり、原則として本人の意思を確認しておくことが必要だということです。
 その写真の被写体が誰であるかが特定できないほど不鮮明である場合や、被写体が背景の一部に溶け込んでいるためプライバシーの侵害にあたる恐れがない、といった場合であれば、無断で写真を使用することはあってもよいと思いますが、そのような判断には法的に明確な基準がなく、被写体となった本人が迷惑な行為であると感じてしまえば、法的なトラブルに発展する恐れがないとは言えません。
 最近ではテレビ番組の中で、背景となった人物の肖像だけでなく、民家の表札や車両のナンバープレートにまでモザイクなどを使って不鮮明にした映像を放送していることが多くなりました。かつてはそこまでの配慮はされていませんでしたから、人々のプライバシーに関するこだわりや配慮が徐々に強くなってきているということです。
 顔や肖像だけでなく、住所、本籍、電話番号などもプライバシーに関係する個人情報にあたり、本人の意思に反して利用されないよう会社として細心の注意を払わなければなりません。
 逆に考えれば、本人がそのような肖像の利用について納得していればよいわけですから、必要に応じて了解を得ておけばよいし、それが面倒であれば写真の利用を止める、又は、その従業員の肖像を不鮮明にするなどしましょう。
 なお、写真の利用については著作権の問題も生じうることについてご注意ください。
 原則としては、その写真を撮影した人物が著作権を保有していると考えられるので、著作権を保有する人物から、その写真の利用についてあらかじめ許諾を得ておくべき場合があります。
posted by 風営法担当 at 14:58 | 法務相談カルテ

2018年11月05日

海外から労働者を招いて働いてもらうことは可能ですか?

(プレイグラフ2015年1月号「法務相談カルテ」掲載)

 外国人が日本に滞在するためには、出入国管理及び難民認定法(入管法)に定められた27種類の在留資格のいずれかを取得する必要があり、外国人が日本で就労できるかどうかは、その外国人が保有している在留資格で認められている仕事であるかどうかによります。

 例えば、翻訳や通訳の仕事をする場合には、文系の仕事をすることができる「人文知識・国際業務」という在留資格が必要となりますし、エンジニアとして働く場合には、理科系の仕事をすることができる「技術」という在留資格が必要です。

 これらの資格の要件は入管法に基づいて細かく定められています。「人文知識・国際業務」や「技術」の在留資格を得るためには、大学などの教育機関で習得した専門知識や充分な実務経験が必要です。また、外国の料理のコックさんなどが日本で働くための在留資格である「技能」については、その国の料理に特有の調理技能について実務経験や本国での調理師資格の取得などの要件が定められています。つまり、日本で就労するための在留資格を取得するには、高い専門性に見合った学歴や実務経験が必要となります。一方で、工場のラインや建設現場などで単純労働者として働くための在留資格はありません。日本の出入国管理制度では、日本国内の労働者だけではまかなえないほどの高度な専門性を持った人材は受け入れるが、単純労働者は受け入れないという原則があるのです。

 しかし、現実には工場や建設現場で働く外国人を見かけることは珍しいことではありません。なぜなら、27種類の在留資格のなかには「日本人の配偶者」や「定住者」、「永住者」のように、就労に関する制限の無い在留資格があるからです。例えば、日本人の妻や夫、日系二世、三世といった人、また、永住が認められた人などがこれに該当しますが、この人たちは元々日本で生活することを目的として日本での在留が認められており、在留資格での就労制限がないので、工場や建設現場など、どこで働いても大丈夫ということになっています。

 また、最近注目されているのが「技能実習」という在留資格で、すでに多くの工場や建設現場で外国人が技能実習生として働いています。発展途上国には、先進国の進んだ技術や技能、知識を修得して、その国の産業を振興させたいというニーズがあります。そのために労働者を一定期間日本に送り出させて技術や技能を身につけさせることが「技能実習」という在留資格の目的です。

今のところ最長で三年間にわたって日本で在留することが可能ですが、対象となる業種は、2014年4月現在で建設や製造、農業、漁業関係など68職種、126種の作業に限定されており、これに該当する職種であれば、受け入れ可能な人数枠内の技能実習生を受け入れて工場等で働いてもらうことが可能となりますが、パチンコ店営業の技能実習は認められていません。

  なお、飲食店やコンビニなどで外国人留学生がアルバイトをしていることがあります。留学生は日本で留学するための必要経費などを補う目的で、「資格外活動」としてアルバイトをすることが入国管理局から特別に認められることがあるのです。ただし、パチンコ店を含む風俗営業のために留学生が資格外活動を行うことは現在の法令(出入国管理及び難民認定法施行規則)では認められていません。

  パチンコ店営業で外国人が働ける機会は、「日本人の配偶者等」「定住者」「永住者」など一定の身分に基づいてすでに日本に在留している場合に限られています。しかし、パチンコ店を経営している企業であっても、同時に中華料理店を経営しているなどの場合に、その料理店で働く予定のコックが入国管理局から「技能」の在留資格認定証明書の交付を受けて、「技能」の在留資格で入国できるケースがあります。

  つまり、パチンコ店を経営する企業でも業務内容によっては海外から労働者を招聘することはできますし、規制緩和によって外国人労働者が活躍できる機会は今後増えてゆくかもしれません。

(imamura)
posted by 風営法担当 at 14:53 | 法務相談カルテ