2021年08月02日

店長として他エリアに異動した際に注意すべきことを教えてください(法務相談カルテ2015年8月号)

 他の都道府県からの人事異動によって店長に就任した場合には、管理者の変更について公安委員会へ届出をしなければなりませんので、管理者として選任されてから10日以内に管轄の警察署へ変更届を提出してください。その際には、転入先の市区町村で交付された「住民票の写し(本籍地の記載があるもの)」と「身分証明書」、ご自分の証明写真、身分の欠格事由に該当しないことについての誓約書、前店長の管理者証等が必要となります。

 次に、赴任先の都道府県の風営法施行条例の内容を確認しましょう。都道府県によって規制内容に若干の相違がありますから、早々に目を通しておくべきです。
 次には、風俗営業許可に付された条件の有無を確認してください。風俗営業許可証の裏側を見て、もし何らかの記載があれば、それが「許可に付された条件」であるかもしれません。「許可に付された条件」があるならば、その条件に違反しないよう注意してください。許可の条件に違反してしまうと、最悪の場合は営業許可の取消しなどの重い処分を受ける恐れがあります。

 もし、「営業所を拡張してはならない。」という許可条件が存在していた場合には、その営業所の範囲がどこまでであるかを理解しておく必要がありますが、そのためには、営業所の許可当時から現在にいたるまでにどのような手続がなされてきたか、現在はどのような設備状況で公安委員会から承認を受けており、どのような経緯で条件が付されたか、といったことなども把握しておきましょう。
 それらのことは、許可申請書や構造設備の変更承認申請書に添付されている図面等で確認することができます。ついでに「客室の範囲」についても確認しておきましょう。客室の範囲に影響するような構造設備の変更が行なわれたり、客室の内部に高さ100pを越える設備が設置されたりすることによって、風営法違反となってしまう恐れがあるからです。
 営業所周辺の略図も見ておきましょう。営業所の付近に保護対象施設があったり、買取り関与の疑いを受けやすい状況であったりすれば、リスクとして把握しておく必要があります。

 次に、赴任先の営業所で過去にどのような違反処分や行政指導を受けたかを確認しましょう。もし指示処分や行政指導を受けていた場合には、その指示や指導がきちんと遵守されていることを確認し、違反行為を繰り返さないよう注意して営業を行いましょう。
 つい最近に法令違反に関して行政処分を受けていた場合には、違反行為を繰り返してしまうと営業停止など重い処分を受ける可能性が高くなりますし、営業所が特例風俗営業者としての認定を受けることができるか、又は、あとどれくらいの期間が経過したら認定を受けられるのか、といったことも確認しておくとよいでしょう。
 そして、前任者から引き継いだ情報を元に、その営業所に特有のリスクを把握し、リスク回避のために注意すべき点や、リスク発生時の対処法などを検討しましょう。
 管理者の業務についても確認しておきましょう。従業者名簿の管理や構造設備の点検等が計画的に行われ、記録が適切に整備されているかどうかを把握してください。もし問題点や不安な要素があれば前任者に確認する必要があります。また、その地域に特有の自主規制や法令違反の傾向、近隣店舗の動向などについても注意が必要です。

 最後になりますが、これらのことは、前任者が適切に業務を管理し、引き継ぎのための準備や配慮を行っているからこそ可能なことです。ご自分がこれから去ろうとする店舗においても、新任者が適切に業務を引き継ぎできるよう必要な措置を取っておくことが大切でしょう。
posted by 風営法担当 at 18:29 | 法務相談カルテ

2021年03月29日

営業中に音楽や映像を使用するには許諾が必要ですか?(法務相談カルテ年月号)

その映像や音楽などのコンテンツの内容に、第三者が保有する著作権の対象となる著作物が含まれているかどうかが重要です。著作物とは「思想や感情の創作的な表現」のことであり、第三者が制作した音楽や映像は著作物である場合が多いのですが、制作後長い期間が経過して著作権が消滅したなど例外的な場合を除けば、著作物には著作権が存在している可能性が高いと考えられます。

著作権は「権利の束」と言われ、著作物の使用を独占する複数の財産権の総称です。
たとえば、著作物の複製行為を独占する権利は複製権、著作物のインターネット上の利用を独占する権利は公衆送信権であり、このほかにもたくさんの権利があって、これらをひとまとめにして「著作権」と呼ばれています。

店舗で営業中に音楽や映像を客に聴かせたり見せたりする行為は、音楽については著作権の中の上演・演奏権を、映像について上映権を侵害する恐れがあるので、それらの権利を侵害しないよう、権利を持つ人又は法人から事前に許諾を得なければなりません。
なお、「上演」とは歌を歌うなどして演じること、「上映」とは映写幕や画面などに映写することを言います。以下に著作権法の関連条文を抜粋します。

(上演権及び演奏権)
著作権法第二十二条  著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。

(上映権)
著作権法第二十二条の二  著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。

このように著作権法では、「著作者は、その著作物を、○○する権利を専有する。」という表現をとっています。たとえば著作物をコピー(複製)する場合であれば、複製権を持っている人だけが複製できるということであり、言い換えれば、複製権を持っていない人は複製してはならないので、著作物を複製したい第三者は、その複製行為について複製権者から許諾を得ておかないと、複製権を侵害することになってしまいます。

一般的に、業務上の契約によって有線放送されている音楽は、著作権に関する権利処理が行われているので問題ありませんが、市販のCDとして入手した楽曲や、インターネットで独自にダウンロードした楽曲等を店舗で使用するような場合には、日本音楽著作権協会(通称「JASRAC」)等の機関を通じて必要に応じて権利処理を行う必要があります。

パチンコ店が営業中に楽曲を店内放送することは、有料コンサートやカラオケボックスのように、音楽を主たるサービスとして対価を得ているわけではありませんが、営利目的での使用ではあるため、原則として使用料の支払いが避けられません。

JASRACではあらかじめ決められた使用料規定に従って使用料が徴収されます。楽曲の使用についてご不明の点があれば、とりあえずJASRACに問い合わせしてみるのが無難です。

映像についても、テレビ番組やインターネットの映像を録画したものや、市販で購入したDVDの映像等を店内で上映する場合は、その映像に含まれている様々のコンテンツについて、原則として個別に許諾を得る必要があります。
映像には映像製作者が有する著作権のほか、楽曲の著作権、テレビ放送等における放送事業者の権利、映像の中に登場する画像やキャラクターに関する著作権、タレントについてはパブリシティー権など多数の権利が含まれていることが多いうえ、楽曲におけるJASRACのように、権利処理を一本化している機関が存在しないため権利処理は容易ではありません。

仮に著作権を侵害した場合には、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金が定められており、コンテンツの使用差し止めや損害賠償の請求が行われる恐れがあります。

但し、業務上の使用について必要に応じて契約がなされているのであれば問題ありません。また、保護期間の経過等によって著作権が消滅しているコンテンツについては、許諾無しで使用できる場合がありえます。
いずれにせよ、コンテンツの権利関係は複雑になっている場合が多いので、気になったときは関係先に確認してからご利用になってください。
posted by 風営法担当 at 16:16 | 法務相談カルテ

2021年03月15日

行政処分の量定とは何ですか?

(月刊プレイグラフ 2015年6月号掲載)
都道府県公安委員会は、風俗営業に関して法令違反があったときのほか、風営法に基づく処分や許可条件に対する違反行為があった場合には、その風俗営業の「許可の取り消し」、「営業の停止」、「指示」といった処分を行うことできます(風営法第26条第1項)。

具体的にどのような処分を下すかは都道府県公安委員会の裁量に委ねられていますが、どのような行為に対してどの程度の重さの不利益処分を科すべきかを判断する際の基準の一つとなるものが行政処分の量定です。

警察庁では「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく営業停止命令等の基準」を策定し、その中で、許可の取り消し又は営業停止処分を行う際の基準として、処分の理由となる各種の法令違反等の行為をAからHまでの8種類の量定に分類し、量定ごとに科される処分の内容について次のように定めています。

A 取消し。
B 40日以上6月以下の営業停止命令。  基準期間は、 3月
C 20日以上6月以下の営業停止命令。  基準期間は、40日
D 10日以上80日以下の営業停止命令。 基準期間は、20日
           遊技機変更届出義務違反にあっては 1月
E 5日以上40日以下の営業停止命令。   基準期間は、14日
F 5日以上20日以下の営業停止命令。   基準期間は、 7日
G 営業停止命令を行わないもの(指示処分に限り、当該指示処分に違反した場合に当該指示処分違反を処分事由として営業停止命令を行う。)
H 5日以上80日以下の営業停止命令。 基準期間は、20日

量定の「A」は「許可取り消し」となっていますので、もっとも重い処分に相当しますが、「A」に該当する場合としては、構造設備及び遊技機の無承認変更、名義貸し違反、年少者接客従事禁止違反、営業停止命令違反、遊技機に関する承認の不正取得、一定の刑法犯、その他重大な法令違反があげられています。

量定の「B」は、広告宣伝規制違反に対する指示処分違反、遊技機規制違反、年少者の立ち入らせ、未成年者への酒類たばこの提供などがあり、「C」から「G」へと量定が移るにつれ徐々に処分内容が軽くなってゆきます。最後の「H」は、「A」から「G」に分類されていない法令違反に対するもので、風営法施行条例の違反は「H」に該当します。なお、平成27年4月1日から「現金等提供禁止違反」と「賞品買取り禁止違反」が「C」から「B」へ変更されました。

しかし、法令違反等の行為に対する全ての処分が上記の量定に従って科されるわけではありません。都道府県公安委員会は法令違反等があった場合には風俗営業者に対し「指示」という処分を行うことができるとされており(風営法第25条)、通常は最初に指示処分を行い、当該指示処分に違反した場合に許可取り消しや営業停止命令を行うこととされています。

ただし、風営法に基づく処分、又は風営法もとづいて付された許可条件に違反した場合のほか、次のような場合は指示処分を行わずに直ちに許可を取消し、又は営業停止命令を行っても差し支えないものとされています。
(1) 同種の処分事由に当たる法令違反行為であって悪質なもの(風営法に掲げる罪に当たる違法な行為及び制令で定める重大な不正行為を含む。)を短期間に繰り返し又は指導や警告を無視する等、指示処分によっては自主的に法令を遵守する見込みがないと認められる場合。
(2) 指示処分の期間中に、当該指示処分には違反していないが、当該指示処分の処分事由に係る法令違反行為と同種の法令違反行為を行った場合
(3) 罰則の適用がある法令違反行為によって検挙された場合(起訴相当として送致した場合に限る。)
(4) 短期20日以上の量定に相当する処分事由(法に基づく条例の違反に係る処分事由であって各県において短期20日以上の量定が定められているものを含む。)に当たる法令違反行為が行われた場合
(5) 上記(1)から(4)までに掲げる場合のほか、法令違反行為の態様が悪質で、善良な風俗若しくは清浄な風俗環境を害し、又は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがある重大な結果が生じた場合
以上

警察庁が定めたこの基準では、これらのほかにも様々の判断基準が示されており、それらを総合的に勘案して判断することとなりますから、ここで紹介した内容だけで判断されるわけではありません。警察庁のホームページでダウンロードできますので、ぜひ一度目を通しておかれるとよいでしょう。

posted by 風営法担当 at 23:53 | 法務相談カルテ

2020年08月24日

割り印や捨て印とはなんですか?

(プレイグラフ2015年4月号「法務相談カルテ」掲載)

契約書は、署名または記名捺印をすることによって完結します。また、押されている位置によっても意味合いが違ってきますので、正しく理解することが求められます。
 文書を作成したときには、氏名の横やとじ目の上、余白などに印章(印鑑)を押すことがありますが、この押された印章の跡のことを、「印影」といいます。印影は、押されている場所によって意味が異なります。
1.契印(けいいん)
 「一通の文書が2枚以上になった場合に、それらが全体として一つの文書であり、かつ、その順序でとじられていることを明らかにするために、両ページにまたがって押す印影のこと」をいいます。注意する点としては、
・ 一つの契印が両ページに半分ずつまたがるように押す 
・ 必ず一枚ごとに押す
・ 文書に自署または記名した際に押した印章と同一の印章を押す
・ 二人以上が自署または記名している場合には、全員が契印を押す
ただし、数ページの文書を帯でのり付けしている袋とじの場合は、裏表紙と帯にまたがって、一か所に契印すればよいとされています。
2.訂正印
「文書の字句を誤字脱字等の理由で訂正する場合に、その 訂正箇所または欄外の訂正内容を明記した部分に押す印影のこと」です。注意する点としては、
・ 訂正部分を二重線で消し、横書きならその上、縦書きならその右横に訂正後の字句を記入する
・ 文書に自署または記名した際に押した印章と同一の印象を押す
・ 二人以上が自署または記名している場合には、全員が訂正印を押す
などがあります。
3.割印
「二通以上の独立した文書がある場合に、それらの文書の同一性や関連性を示すために、それらの文書にまたがって押す印影のこと」をいいます。割印は、それぞれの文書の関連性を示すものなので、文書に自署または記名した際に押した印章と同一の印章でなくてもよいとされています。
4.捨印
「後日、文書の内容を訂正する必要が生じた場合に備えて、あらかじめ欄外に押す印影のこと」をいいます。訂正印と同じ意味を持っています。注意する点としては、
・ ある程度の範囲内で文書の訂正が自由にできるため、むやみには押さないようにする
・ 文書に自署または記名した際に押した印章と同一の印章を押す
・ 二人以上が自署または記名している場合には、全員が捨印を押す
などがあります。
5.消印
「収入印紙の再使用を防ぐために、印紙と下の台紙にまたがって押す印影のこと」をいいます。消印は、文書に自署または記名した全員が押す必要はありません。また、文書に自署または記名した際に押した印章と同一の印章でなくてもよく、さらに印章ではなく、署名でもよいとされています。注意する点としては、
・印紙の彩紋(もよう)にかかっていること
・印紙と文書の双方にかかっていること
・印鑑による場合は、朱肉、インクなどにより、鮮明に押してあること
・筆記具による場合は、ボールペンなど消えないものによること(鉛筆などは不可)
6.止め印とは、
「文書の下に余白が生じた場合に、その文書の終了を示すために文書の末尾に押す印影のこと」をいいます。注意する点としては、
「文書に自署または記名した際に押した印章と同一の印章を押す」
などがあります。印章ではなく、「以下余白」などと記入しても同じ意味を持ちます。
最後に、母印や書き判のことについて、少しご説明します。印鑑を持ち合わせていないときに、代わりに指先で「母印」を押すことがあります。親指や人差し指で押すことが多いようですが、母印は一般的に公文書では使いません。また、名前を書いてその周りをさっと丸で囲んで押印の代わりにしたりすることがよくあります。これを「書き判」といいますが、これも公文書では使いません。

鰍フぞみ総研 平井知子
posted by 風営法担当 at 09:52 | 法務相談カルテ