2014年06月14日

駐輪場に放置された自転車を使用しても大丈夫ですか?

こたえ (プレイグラフ2012年12月号「法務相談カルテ」掲載)


 駐車場の管理者としては他人の自転車を無断で廃棄するわけには行かず、当分の間はその自転車を保管しなければなりませんが、もし自転車の所有者が引き取りに来て、保管費用を支払ってくれなかったら、その保管にかかる費用は丸損ということになります。
 それではもったいないので、従業員が近所でちょっと用事があるときに、その自転車に乗ってみようかと思っても不思議ではありません。ところが、その自転車の運転中に警察官に職務質問され、調査の結果、その自転車が盗難車であることがわかったとします。
 所有者が判明して一件落着、ということで済めばよいのですが、警察官はその従業員を自転車の窃盗犯だとして疑ってしまうおそれがあります。
 その際に従業員は、自転車が駐輪場に放置されていたものだという説明をするでしょうが、今度は占有離脱物横領罪で立件すると言われたりすることがあります。

<刑法第254条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。>

 放置自転車は「占有を離れた他人の物」にあたり、これを「占有離脱物」とも言うのですが、従業員が所有する意思を持たず一時的に使用した程度で犯罪になるとは限らないものの、無用の疑いを受けるきっかけになりやすいことは間違いありません。
 自転車の窃盗事件は全国で毎年40万件前後、一日当たり1000件以上の割合で発生しており、自転車の窃盗犯の検挙が他の犯罪事件解決の糸口につながることも多いらしいので、警察官は自転車泥棒について関心を持ちやすく、疑いを晴らすのは容易ではありません。最悪の場合は犯罪者として処罰を受ける恐れもあります。

 では、このようなケースではどのように対処していればよかったのでしょうか。
 駐車場の管理者としては、放置自転車の所有者と連絡が取れないので仕方なく保管していたわけですが、引取りが期待できないとわかった時点で、遺失物法に基づいて警察署長に遺失物として届出(提出)をするという方法がありえます。
 状況によっては「遺失物ではない。」という理由ですんなりと受理されないこともあるようですが、少なくとも警察に相談をしてその事実を記録しておけば、警察から疑われた場合により少ない手間で容疑を晴らすことができるでしょう。
 管理する自転車の台数が多い場合でも、一台ごとに放置の状況やその後の管理の経緯、行政との連絡の事実等を詳細に記録しておいた方がよいです。
「自分は悪いことをしていないから大丈夫。」
 そういう考え方が通用しない場合があります。新品で購入した自転車ならばあまり心配はありませんが、他人から譲り受けたとか、捨てられていたから拾って使っているとか、そういった場合にも、泥棒扱いされる危険を承知のうえで自転車に乗りましょう。
 自転車には防犯登録制度があり、自転車の使用者は所有する自転車を登録することが義務付けられていますので、もし他人から譲り受けるなどした場合には登録の手続をしておくとよいでしょう。

 自転車を放置する側にも重大な問題があります。自転車を放置し他人に管理させてしまった場合には、当然ながら管理費用を賠償する責任があります。また、不適切な場所に放置した自転車が原因となって、他人に怪我をさせたり事故や災害を発生させた場合は損害賠償責任が生じますし、道路交通法や廃棄物処理法などの法令に違反するケースもあります。たとえば、使用しなくなった自転車を放置することは廃棄物処理法に違反します。

 <廃棄物処理法第16条  何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。>
 (刑罰:五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する)

 自転車は粗大ごみとして自治体に処分してもらうか、自転車店等で引き取ってもらうなどして適切に処分しましょう。
posted by 風営法担当 at 19:59 | 法務相談カルテ

2013年08月24日

著作権法が厳しくなると聞きましたがホール営業に影響がありますか?

こたえ (プレイグラフ2012年11月号「法務相談カルテ」掲載)

 本年6月20日、改正著作権法が成立しました。改正点はいくつかありますが、その中で厳格化にあたる改正点は「違法ダウンロードの刑罰化」の部分です。違法ダウンロードは誰でも簡単にできてしまう、とても身近で油断されやすい法律違反行為です。たとえば動画共有サービス(YOUTUBEなど)でAKB48の映像と楽曲が何者かによって違法にアップロードされていたとしましょう。

 その映像又は楽曲のデータが違法にアップロードされたものであることを知りながらパソコン端末へ故意に保存してしまうと、たとえ家庭内などでの個人的な目的の利用であったとしても著作権法違反となってしまいます。(動画共有サービスのシステム上で動画を閲覧等することは違法なダウンロードにはあたりません。)

 これまで違法ダウンロードは刑事罰の対象とはなっていませんでしたが、今回の著作権法改正によって、平成24年10月1日からは、このような違法ダウンロードについても10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(またはその両方)が科されることになりました。

 たとえ小学生であっても、ファンが趣味で行ったダウンロードであったとしても、「違法にアップロードされたものであること。」と「有償で提供されている映像又は音楽であること。」を知りながらダウンロードすれば、犯罪者として責任を追及されてしまうのです。

 但し、業務上の目的で著作物をパソコン端末に保存することは、もともと著作権法違反であり刑事罰の対象ですので、今回の著作権法改正はホール営業へ直接の影響はありません。パソコンにデータを保存するということは、パソコン上にデータをコピーしたということであり、著作権が存在する著作物をコピー(複製)する際には、事前に著作権者からコピーの許諾を得ておかなければ著作権侵害、つまり著作権法違反であって、刑事罰の対象となりえます。

 ホール従業員が業務上の目的で違法ダウンロードを行えば、その法的責任は雇用主である法人にも及ぶ可能性があります。
 ホール営業では、遊技機に関連するキャラクターやタレントの画像などを広告宣伝で様々に使用していますが、これらは全て著作権者や肖像権者等の権利を侵害しない範囲でのみ使用できるのであって、権利者が定めた使用条件を逸脱して使用する際には、全て権利者から事前の許諾が必要なはずです。ですので、キャラクターの種類ごとに使用条件をよく理解して使用しなければなりませんが、実際のところ、使用条件はきちんと守られているでしょうか。

 「遊技機を買ってやったんだから、キャラクターくらい広告で好きに使って当然だ。」という考え方は、著作権者や世間一般に受けいれられるものではありません。私が巷の店舗をざっと見たところでも、明らかに使用条件を無視していると思えるような使用方法が目に付きます。

 無関係のキャラクターと組み合わせたり、キャラクター本来のイメージを壊してしまうような悪質な改変もあります。店舗WEBサイト上の従業員募集コーナーで、その会社に無関係なはずのキャラクターに「大歓迎!」などと言わせてしまうのは企業として恥ずかしいことだと思わなければなりません。

 パチンコ業界でしか知られていないキャラクターならともかく、AKB48のような認知度のきわめて高いキャラクターの場合だと、パチンコ業界の広告宣伝方法は世間一般の注目を浴びやすくなります。
 広告宣伝の内容については、風営法違反も著作権法違反も全てホール企業が最終的な責任を負うのであって、広告代理店や印刷会社などに責任を押し付けて済む話ではありません。

 著作権や肖像権等の保護に対して、ホール企業としてきちんと対応できているのかどうか、常に念頭に置きながら慎重に対応していただきたいと思います。 
posted by 風営法担当 at 00:00 | 法務相談カルテ

2013年07月28日

 社員に風営法をどのように理解させたらよいのでしょうか? 

こたえ (プレイグラフ2012年10月号「法務相談カルテ」掲載)


最近ホール業界では風営法の解釈について悩む機会が増えてきていますし、行政からも風営法についてきちんと理解するよう強く要請されています。
 法律を理解しようとする場合には、まず法令集などを開いて法令や解釈基準などを実際に読み、ホール営業を規制している制限や義務について、法的根拠がどのようになっているかを自分の目で確認することが重要です。

 法律が嫌いな人なら、法令集を開いた瞬間にやる気をなくしてしまうかもしれませんが、そこをどうにかこらえてもらう工夫が必要です。
 中学生のとき、誰でも英語の授業で辞書を引く作業をしたはずです。英語を話すことが好きな人にとっては楽しい作業ですが、嫌いな人にとっては苦痛でしかありません。つまり、法律の理解を「難しい」「面白くない」というイメージで始めてしまうとなかなか良い結果を出せませんから、楽しく、計画的にすすめる方がよいと思います。

 まずは、今最も気になっている規制や義務を一つ選び、法令集でその根拠を確認してみましょう。どうしてもわからなければ、回りの人たちの知恵を借りましょう。法律について「暗記」に頼ったり、一人で孤独に勉強したりする傾向がありますが、あまりお勧めできません。
 また、風営法の勉強を店長さんだけにさせている風景をよく見ますが、店長さんが法律について苦手意識を持っていたり、忙しくてそれどころではないと考えていたりすると、いつまで経っても風営法を理解してくれません。

 そういった場合には、店長さんの片腕になってくれそうな部下を同時に育てておいた方が、人材育成の面でも、風営法の理解促進の面でも合理的ですから、法令の勉強をさせる場合には、店長さんだけでなく、経営者や一般従業員もまじえ、なるべく多くの人が参加する方がよいと思います。

 もうひとつ重要なことは、自由に意見を交換できる雰囲気を作ることです。法律が苦手な人ほど、自分の意見を述べることが恥ずかしいので意見を言えません。例えば、英語が嫌いな人ほど流暢に話せないことを恥ずかしいと思います。逆に英語が好きな人というのは、自分が下手かどうかを気にしないでどんどん話してしまうものです。

 「間違っていても良いから今の自分の考えを述べる。」「わからないことを正直にわからないと言う。」   
 こういったことを促進させるのは経営者の手腕です。
 風営法を頭で理解しても、風営法に関して自分の意見を言えないということでは意味がありません。 
 なにしろ、管理者の義務として経営者に対しては助言を、部下に対しては指導しなければならないのですから。

 それに、「知ってるつもり」で満足してしまうことも危険です。自分の認識を日々チェックするために、法令に関する話題を職場で増やすようにして、意見交換を活発にすることが重要です。
 多くの場合、研修会で法律の解説を聞かせたらそれ終わり、ということになっていて、日々計画的に勉強したり意見を言い合うということが軽視されています。

 最近は行政の立ち入りの際に従業員に対する指導記録の内容を確認されるなど、ホールが風営法を本気で理解しようとしているかどうかということまで注意を払われるようになって来ていますが、外見だけで中身がない研修をしてしまうと、従業員にとって苦痛であるばかりでなく、まともな法令理解を阻害することにもなります。

 店長さんが風営法の専門家になる必要はありません。なるべく多くの目線で法的な諸問題を発見し、周囲の人たちの知能を結集して判断し、責任者が最終的に決定するという仕組みが確立されていることが理想的な環境です。

 これとは逆に、「知識はあるけど柔軟な判断ができない。」「誰も本音を言わない。」「誰が責任者なのかわからない。」といった状況にある職場では、研修に時間をかけても法令違反のリスクを下げるには限界があります。

 最後にもう一度。風営法を理解させるためには「法的根拠の確認」「日常の会話」。この二つを重視して風営法の理解を着実に進めていただきたいと思います。


posted by 風営法担当 at 00:00 | 法務相談カルテ

2013年06月14日

契約書に押印は必要? 認印と実印、社印はどう違うのですか?

答え こたえ (プレイグラフ2012年9月号「法務相談カルテ」掲載)

 契約書は、どのような契約が存在したかを証明するものです。印鑑が押されていない契約書であっても、契約をした当事者の意思が契約書の中で確認できればよいのです。ですから、契約書に印鑑を押されていないからといって、その契約を無視してよいということにはなりません。

 しかし、もし契約の相手から「そんな契約をした覚えはない、そっちが勝手につくった契約書だろう。」と言われてしまったらどうでしょう。
 契約書に署名も押印もないということなら、その相手に契約を締結する意思があったことを確認できませんので反論のしようがありませんし、裁判の中で契約の存在を立証することは、かなり困難になります。
 民事訴訟法第228条第4項には、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」とあり、署名又は押印のある書類は、その署名又は押印をした人が真正に合意した有効なものであると「推定される」ことになります。

 「あなたは署名したのだから、その契約を締結する意思があったのだ。」と考えられるわけです。
 一般的に、日常取り交わされる契約書の多くは、認印を押すことで充分に成立しています。
 本人が押印している限り、100円程度で簡単に購入できるいわゆる三文判(認印)の押印であっても、役所で登録している実印あっても、「本人の意思表示」としての効力は同じだからです。ですから、実印ではない三文判だからといって、書類をよく読まないまま気軽に押印することは禁物なのです。

しかし、三文判は機械で大量に製造されていて同じ印影の印がたくさんあり、他人でも似たような印鑑を簡単に購入できてしまうので、「知らないうちに勝手に押印された」と相手から主張されてしまうと、本人が確かに押印したということの証明は困難なものになります。

ですから、三文判で押印してもらう場合には、押印させるだけではなく、氏名を自筆で署名してもらうなどの配慮も重要になってきます。
 不動産の購入や金銭の貸借など重要な契約の場合には、ほとんどの場合、実印を押印することになります。実印と三文判の大きな違いは、実印なら官公署から「印鑑証明」が発行されるので、その押印に使用された印鑑の持ち主が証明されるということです。ですから、単に実印で押印すればよいということではなく、実印で押印する場合には有効期限内の(発行から三ヶ月以内)の「印鑑証明」の原本とセットにしておくとよいでしょう。そうすることで、意思表示をめぐるトラブルの多くを防ぐことができます。

 法人の取引の場合には、会社にとって重要な契約や正式な文書を発行するような場合には、いわゆる「社印」といわれる法人代表者印が使われます。法人代表者印は、法人の設立登記がされると必ず法務局に登録されることになっていて、法務局から印鑑証明の発行を受けることもできますから、法人にとっての実印という意味合いがあります。代表者ごとに登録されますので、法人の代表者が変わった場合にもその都度登録されます。

 たまにこの法人代表社印が社長の机にカギもかけずに入っていて、誰でも押印できるようになっている会社がありますが、法人としての意思決定に関わる印鑑ですから、代表取締役以外の人が押印することがないように金庫に保管するなど厳重に管理しておくことが重要です。
領収書や請求書など会社の中で行われる日常の取引の場合には、代表者が自ら決済するのではなく、それぞれの会社において決済をする権限のある方が押印しているケースが多いのではないかと思います。

これについても、その契約について法人としての意思を代表し、それぞれの決裁権限に基づいて契約書の押印がなされ、そのことが社内で明確にされているのであれば、その印鑑が例えば「○○事業部長の印」であっても大丈夫とお考えになってよいと思います。

のぞみ総研 今村正典
posted by 風営法担当 at 00:00 | 法務相談カルテ

2013年05月10日

法律と規則はどう違うのでしょうか?

こたえ (プレイグラフ2012年8月号「法務相談カルテ」にて)


「営業の基本となる法律や通達をきちんと確認しない慣習」を改善せよという行政からの声も聞こえてきていますから、法令や通達という存在がどういったものであるかを理解し、規制の根拠をご自身で確認することはとても重要だと思います。

 まず皆さんは、法令や通達を作ったり修正したりできるのは誰であるか、ということをご存知でしょうか。

 風営法と言えば法律ですから、国会での議決を経て作られたルールです。国会が作ったルールなので、このルールを変更することができるのは国会だけです。
 しかし、風営法はその内容の詳細について行政庁に判断を委ねている部分があります。

 細かいことまで全て国会で議決することにしてしまうと、時間がかかりすぎるため社会情勢に対応した柔軟なルールの見直しができなくなるからです。

 法律の委任を受けて定められる場合としては、政令や府令(省令)、規則といったものがあります。政令は内閣が定めるもので、風営法関連の政令としては「風営法施行令」があります。府令は内閣府が定めるもので、「風営法に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令」があります。規則は一般的に国家公安委員会などの行政委員会が定めるもので、「風営法施行規則」があります(いずれも正式名称が長文のため略記しています。)。

 たとえば、賞品の等価交換に関する規定は風営法には書いてありません。風営法第19条の「遊技料金等の規制」という条項の中で、「風俗営業者は、国家公安委員会規則で定める・・・賞品の提供方法・・・に関する基準に従い、その営業を営まなければならない。(一部抜粋省略)」とあります。
 賞品の提供方法の基準については国家公安委員会が定めた規則の方を見てください、ということなのです。

 国家公安委員会は内閣総理大臣から国務大臣として任命された国家公安委員長を中心として構成され、全国的な警察制度を管理運営する委員会です。その国家公安委員会が風営法によって任されて作った規則をまとめたものが「風営法施行規則」です。

 その第35条第2項で、賞品の等価交換に関する定めがあります。

法第十九条 の国家公安委員会規則で定める賞品の提供方法に関する基準は、次のとおりとする。
一  次に掲げる営業の種類に応じ、それぞれ次に定める物品を賞品として提供すること。
イ ぱちんこ屋及び令第七条 に規定する営業で遊技球等の数量により遊技の結果を表示する遊技機を設置して客に遊技をさせるもの
 当該遊技の結果として表示された遊技球等の数量に対応する金額と等価の物品

 このように、賞品の等価交換に関する規定は風営法ではなく風営法施行規則に定められています。この規則は国家公安委員会が作った規則なので、国家公安委員会が改正することができます。その国家公安委員会の事務を執り行い補佐するのが警察庁の役割です。

 警察庁の仕事は、都道府県警察が行うような一般的な警察のイメージと比べてかなり地味ではありますが、警察庁と警視庁とで名称が似ているのでよく誤解されます。
 警察庁の中の5つの部局のひとつに生活安全局があり、その中には風営法の制度運営の分野を担当している保安課があります。

 風営法に関して、警察庁から都道府県警察本部等に対し事務上の取り扱いに関する命令や法令解釈を示すことがあり、これらを通達と言うことがあります。また、警察庁や都道府県警察本部の関係部署から業界団体等に対し法令遵守の徹底を求めたり、営業上の配慮や改善などを要請することがありますが、このような場合には「通知」という言葉が使われることがあります。

 法律、政令、府令、規則。これに各都道府県の条例を含めたものを広い意味での「法令」と言います。これら各種の法令のほか、通達、通知、業界団体が自主的に取り決めたガイドライン、これら各々の違いを意識しながら、日々の判断を行っていただきたいと思います。
 
posted by 風営法担当 at 00:00 | 法務相談カルテ